“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
磐田・大南拓磨がJ1残留で得た、
CBに不可欠なミスとの向き合い方。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/12/12 17:30
ジュビロのJ1残留に貢献した大南拓磨。東京五輪世代の最終ラインを束ねる有力候補だ。
家長への対応が……。
川崎はその隙を見逃してくれなかった。登里が正確な縦パスを送ると、大南は慌てて家長に食いついた。次の瞬間、家長は得意の左足でボールコントロール。素早くターンして前を向いた。
家長らしいプレーで完全に振り切られた大南は、必死に追いかけて寄せるが、中央に折り返される。ボールはFW知念慶のシュートを防ごうと滑り込んだDF大井健太郎の足に当たり、ゴールへと転がった。
不運ではない、完全に切り崩されての痛恨の失点。
再開直後にタイムアップのホイッスルが鳴り響く。大南は両手を膝について、呆然とした表情で前を見つめた。J1残留濃厚だったはずの磐田が16位に転落し、J1昇格プレーオフに回ることになった瞬間だった。
「あのとき僕が櫻内さんに『行くな!!』とコーチングできていれば。家長選手にボールが入ってしまった時、左利きということを把握して縦を切ったり、ゴールをふさぐような守備も……。相手の動きにリアクションする形になり、焦ってしまった。冷静になって、自分からアクションを起こして止められなかったかと」
1週間後に挽回のチャンス。
もしこれでシーズンを締めくくることになっていたら、まさに最悪の結果だっただろう。しかし昨季までのレギュレーションなら16位までがJ2降格だが、今季は参入プレーオフ決定戦に回る。大南にとっては悔やんでも悔やみきれないプレーだったとはいえ、まだJ2降格が決まったわけではなかった。
それは磐田、そして大南にとっても少しばかり幸運だった。
「ものすごく責任を感じましたが、『まだ挽回できるチャンスがあるのはラッキーなことだ』と自分に言い聞かせながら1週間を過ごしました」
そして迎えた東京V戦。絶対に負けてはいけない戦いで、大南はフル出場を果たした。
「(山田)大記くんや(大井)健太郎くんが『前から行こう』と言っていたので、引かずにしっかりと前からハメていく。そうすれば自分達のペースで戦えると思った。攻めている時も後ろがしっかりと集中しよう。そう健太郎くんと声を掛け合って集中できました」