マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
一軍半の選手のためのFAを作ろう。
出場機会があれば輝く選手は多い。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/12/07 08:00
8年目のブレイクを果たしたソフトバンクの牧原大成。過去6年の合計の2倍以上のヒットを1年で放った。
ソフトバンクで埋もれかけていた牧原。
ソフトバンク・牧原大成内野手の今季後半の活躍もめざましかった。
オールスター明けあたりから二塁手のレギュラーとしてしっかり打線の脇を固め、後半戦の59試合で.317をマーク。持ち味の快足と敏捷な守備ワークで走り、守り、パ・リーグ2位の確保に貢献。日本シリーズ制覇につなげる貴重な働きをやってのけた。
その牧原にしても、昨季までの7年間で一軍出場は175試合。ファームでは毎年のように3割前後をマークして、2013年にはウエスタンリーグの盗塁王、'14年には首位打者を獲得。地道に実績を積み重ねながら、なかなか報われなかった事実もあった。
「牧原なんか、ヨソに行ったらバリバリのレギュラーだよ」
「レギュラーどころか、タイトル獲れる実力だってありますよ」
なかなかに辛口ぞろいのソフトバンク関係者ですら、そんな賛辞を送っていたほどだ。
牧原大成の場合はFAで覚醒した例ではないが、プロ8年目の「遅すぎた春」。何かのはずみで、もしかしたら埋もれてしまっていたかもしれないような、ギリギリの台頭であったろう。
「もう1つのFA」があってよい。
チーム事情によってファームに埋もれかけている選手にも、FA権が与えられてもよいのではないか。
そういう制度が新たに設けられてもいいんじゃないか……と、ここ数年ずっと考えている。
今のFA制度の現実とは、ある球団で懸命に働いて功なり名を残した選手が、さらに「望む環境」の中でもうひと旗揚げようとするボーナス制度、という表現でそう大きく外れてはいないだろう。
ならば一方で、チーム事情によって実力発揮の場所と機会をなかなか与えられない選手たちのための「もう1つのFA」があってもよいのではないかと思う。
たとえば、「6年以上200試合未満(野手の場合)」でもよい。一定の線引きをして、それに満たない出場数の選手たちに、
「どちらか、僕の力を買ってくれるチームありませんか!」
そんな“申し出”を発してもよいという新たなFA制度。但し、非公開だ。「ヨッシャ!」と応じる球団がなかった場合、何ごともなかったように来季を迎えられるために。