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八村、渡邊不在もW杯予選6連勝。
比江島慎が豪州で得た逞しさとは。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byItaru Chiba
posted2018/12/06 07:30
比江島慎はカザフスタン戦で3ポイントシュートを決めるなど、チームを勢いづかせた。
オーストラリアでの“違い”。
Window5を前にしての取材対応では、ブリスベンで受けている“カルチャーショック”など、現地の様子についてもいろいろと語っていた。
比江島がまず挙げたのは、全体練習が少ないことだ。基本的には週に3日。しかも国内で時差があるほど広いオーストラリアでは移動時間が長いため、アウェイへの遠征では移動だけで終わってしまい、練習をしないことが少なくないという。
「体を動かすのは散歩くらい。試合前日に練習しないことがあるというのは、日本では考えられなかったことでした」
チームメートからの呼び名は「モー」。「まこと」の発音が難しいからだと思われるが、由来は不明で「最初は自分が呼ばれていると気づきませんでした」とのこと。
そんな中で「メンタルは鍛えられて強くなっていると思いますね。けっこう辛いこともあるんですけど、乗り越えていっています」と言う。
英語の先生は結局つかない。
最も辛いのは言葉が通じないこと。もちろん、ミニバス時代からエリート街道まっしぐらだった比江島だけに、試合に出られないというかつてない経験も、言葉が通じない辛さを膨らませているのだろう。
さらに、語学に関しては誤算もあった。チームからは英語の先生をつけてくれると言われていたというが、現時点でまだついていないそうだ。英語をしゃべれなければ、オンザコートでのコミュニケーションに影響が出るのは否めない。
英語を話せないことでとんだ“罰金”を払う羽目になったこともある。
「恥ずかしいんですが」と言って明かしたのが、10月11日のNBL開幕戦のこと。ニュージーランド・ブレイカーズとの試合のためにブリスベンから国際線に乗って移動した比江島は、出発時にチームスタッフから配られたバナナをカバンの中に入れっぱなしで飛行機を降りた。
すると、ニュージーランドの空港内で突然、検疫探知犬に吠えられてしまった。農業国であるニュージーランドやオーストラリアでは食べ物の持ち込みが厳しく制限されているのだ。