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香川真司の移籍志願で起きた変化。
ドルトムントと地元紙の好意が……。
posted2018/11/30 10:30
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
AFLO
今季が始まってから香川真司の置かれた状況が決して良いものではないことは、ある程度、誰もが知る事実だ。W杯後でドルトムントへの合流が遅くはなったものの、明らかに今季の新たな路線に乗り遅れた。
ルシアン・ファブレ新監督はジェイドン・サンチョに代表されるような10代の有望株を積極起用する一方で、信頼を置く新加入のベルギー代表アクセル・ビツェルは香川と同じ'89年生まれの29歳である。
マルコ・ロイスはキャリアハイと言えるような活躍を見せているし、代謝異常などの病気に悩まされたマリオ・ゲッツェも自らの得点でドイツ代表をW杯優勝に導いた'14年夏以来の活躍、つまりは復活を遂げている。
選手起用からわかるのは、新路線は決して若手重用路線というわけではなく、新たなファブレ基準での起用と戦術を徹底するということだ。そこに香川は乗り遅れ、未だに流れに乗れる兆しはない。11月も終わろうとしている今、公式戦出場はわずか4試合にすぎない。
当初は香川に好意的だった。
それでも、地元メディアやファンたちは香川に好意的だった。なぜなら2010-11、2011-12シーズンに2連覇したドルトムントの一時代を作った1人だという強い認識があるからだ。一過性ではなくオールタイムの功労者なのであり、そのことは未来永劫変わらない。
またマンチェスターU移籍時の移籍金でクラブが多少潤ったという現実的な貢献もしている。だからこそ、ファブレ体制の「犠牲者」というような捉えられ方だ。
地元紙のルールナハリヒテンのツイッターは選手が練習に参加したか、遠征に行くための飛行機に乗ったかなどを詳細に報じてくれるのだが、彼らは今季の主要メンバーの動向を伝えるのと同時に、そして香川は、と書くのをいつも忘れなかった。
香川情報を欲している人がいるということと、地元紙が香川を大事な存在だと捉えていることの証だ。
だが同時に、もう移籍しか解決策がないのではというのもキッカー誌を始め各メディアの姿勢だった。批判的にというのではなく、客観的な事実としてそれしかないだろうということだった。