【NSBC補講IV】皆川賢太郎のスキー革命論BACK NUMBER
1年じゅうスキーができる国を作る。
皆川賢太郎が考える屋内施設の価値。
posted2018/11/29 16:30
text by
皆川賢太郎Kentaro Minagawa
photograph by
2018 HEIDI Co., Ltd.
スキー産業復活のカギの1つとなるのが通年化です。
しかし、冬の競技は他競技と比べて通年化が難しく、実現できるかどうかは将来的な課題でもあります。日本では冬以外、雪が降ることはありません。ということは、競技者たちは、必然的にそれ以外の季節にはトレーニングの場を海外へ求めることになっています。
既存のインドア施設の規模を考えると、競技者にとって画期的な強化になるとは言えませんが、その役割は決して小さいとは言い難いものです。
私がなぜインドアスキー場が重要だと考えているのか。
現在日本にはインドアでスキー、スノーボードを楽しめる施設はいくつか存在しますが、いずれも規模の小さいものです。
インドア施設といえば、1993年から2002年まで千葉県船橋市で営業していたザウスを思い出される方も多いと思います。長さ500m、幅100mのゲレンデでしたが、仮に3000人が同じ時間帯に入館すると、人が密集しすぎてほとんど滑ることができませんでした。
8万人が夏も滑りたいと思ったら。
今、800万人弱のスキー、スノーボード人口が存在しますが、このなかの10%……80万人、なかでもコアと呼ばれる8万人の方々が「夏も滑りたい」と希望したと仮定しましょう。
すると、インドア施設1つではオーバーフローしてしまいまい、ユーザーの方々の需要には完全に応えることができません。
一方、スキーやスノーボードは道具を揃えなければなりません。板、靴など、金額にして10万程度。決して安くない金額です。大半の愛好者が年間スキー場を訪れるのは平均で1~3回程度。たった3回のために10万のものを購入するのはハードルが高いと言えます。
しかも、道具を発注するのは6月、手に入るのは12月。そもそも10万という大金を支払うのにすぐに使えないとか、忘れた頃に届くとか……どんなにお金を払ったから元を取らなきゃという心理が働いたとしても、やはり単価は決して安いとは言い難いものです。