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Vリーグ、新設アジア枠の面白さと
日本人プレーヤー育成のジレンマ。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJT
posted2018/11/28 16:30
Vリーグに加入したリュー・リービン。今季から新設のアジア枠の象徴的存在だ。
日本人選手の成長する場が。
ポーランド代表で、パナソニックに所属するミハウ・クビアクにアジア枠についての印象を聞いた時、彼が指摘したのもまさにその点だった。
「私の意見としては、アジア枠の選手がいい選手であれば、その選手が入ることでリーグのレベルがアップするので、それはいいことだと思う。しかし一方で問題がある。例えば、日本にはいいオポジットがあまり多く育っていない。
それは、Vリーグのほとんどのチームがオポジットに外国人選手を起用し、日本人オポジットが成長する場が取られていたからです。だから、またアジアから別の選手を獲得したら、それは日本人選手が成長する場がもう1つ減ることを意味します」
それから、「あくまで個人的な意見ですが」と念を押してこう付け加えた。
「このルール(アジア枠)をオリンピックの前に採用するのは賢いやり方だとは思いません。なぜなら、オリンピックの前は、日本代表につなげるためにも日本人選手が多くコートでプレーすべきだからです。オリンピックの後に導入したほうがいいのではないかと感じます」
「ポジションに制約を作るのも」
パナソニックの監督である川村慎二も、「例えばサイドに日本人選手が1人しか入れないというような状況を考えると、日本人の育成という観点ではちょっとデメリットがあるのかなと感じる」と語った。
また女子のチームのある監督はこんな見解を語っていた。
「ASEANには大きくて期待できる選手がいるけれど、その選手を起用することが日本の強化になるのか、ジレンマがある。ASEANの選手に日本がお金を払って、ASEANの強化をしていることにもなる。それなら、中国や韓国もアジア枠に入れて、トップレベルの選手に対する戦い方をリーグの中で勉強した方が、日本の選手のためになるんじゃないか。あるいは、(外国籍選手を起用できる)ポジションに制約を作るというのも1つの手段だと思います。
ただ、やはり代表を強くするためには日本人選手を積極的に使わなければ。今年の世界選手権で、海外チームの10代や20代前半の選手があれだけ活躍しているのを見たら、危機感を抱きます」