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Vリーグ、新設アジア枠の面白さと
日本人プレーヤー育成のジレンマ。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJT
posted2018/11/28 16:30
Vリーグに加入したリュー・リービン。今季から新設のアジア枠の象徴的存在だ。
ハイレベルな試合が増える。
昨シーズンのJTは明らかにエドガーに攻撃が偏っていたが、今季はそれが分散されている。劉はパイプ攻撃を得意とし、時にはクイックを打つなど器用さも備え、チームの攻撃の選択肢を広げており、試合を見ていても面白い。JTのセッター、深津旭弘は言う。
「クビアク選手みたいな(トリッキーな)プレーもするし、楽しんでバレーをしているからいいですね。昨季はエドガー1本を軸に行くことが多かったんですが、力賓の攻撃力はすごく高いものがあるので、試合を追うごとにもっと活かしていきたいと思います」
身長212cmのエドガー、200cmのミドルブロッカー小野寺太志、197cmの劉が前衛に3枚並ぶ時のブロックは世界レベルの高さで、それを相手チームがどのようにかわし、打ち破るのかは試合の見どころの1つとなっている。
JTのヴコヴィッチ・ヴェセリン監督は、「アジア枠は素晴らしいアイデア」とうなずく。
実力のある選手が加わることでチームのレベルが上がれば、見ごたえのあるハイレベルな試合は増える。それは観客を惹き付けることにも、その中でプレーする日本人選手の競技力向上にもつながる。
コートに立つ日本人の減少。
しかし一方で、外国籍の選手が増えた分、コートに立てる日本人選手が減っているのも事実だ。JTでいえば、1年目の武智洸史がその1人。
武智は星城高校、中央大学で、日本代表エースの石川祐希と対角を組んできた、守備に長けるアウトサイド。昨シーズンは内定選手としてVリーグに出場し、シーズン後半は先発に固定された。しかし今季、JTは劉と山本将平がアウトサイドで先発し、武智は3番手の状態で出場機会が限られている。
今、男子のV1で先発起用されているアジア枠の選手3人はすべてアウトサイド。そこではオポジットにも外国人選手が起用されているため、サイドでは日本人選手が1人しかコートに立っていない。
今後、アジア枠の選手を起用するチームがさらに増え、しかもポジションが偏れば、そのポジションの日本人選手が育たないという問題が出てくる恐れがある。