卓球PRESSBACK NUMBER
世界の卓球界に広がる謎のマナー。
「0点で勝ってはいけない」は本当?
text by
伊藤条太Jota Ito
photograph byAFLO
posted2018/11/27 10:30
真剣勝負には最後まで緊張感が伴っていて欲しい。試合を終わらせる1点が意図的なミスで入るのはどうだろうか。
語り継がれる「限界の風格」。
同じく荻村伊智朗に「人間能力の限界の風格を持つ」と評されたスウェーデンのシェル・ヨハンソンという卓球選手がいる。
1967年世界卓球選手権ストックホルム大会で、ヨハンソンは男子シングルス1回戦でソ連のスタニスラフ・ゴモスコフと対戦した。序盤からゴモスコフがリードし、3ゲーム目20-19とゴモスコフがマッチポイントを握った。あと1点でゴモスコフの勝利が決まる。ヨハンソンは負ければ1回戦敗退である。
次のラリーがエッジで入ったかどうか微妙なボールとなったが、審判はヨハンソンの得点として20-20とした。しかしヨハンソンは「今のは自分の得点ではない」とアピールし、敗北を認めてゴモスコフに握手を求めて歩み寄ったのだった。
まさに人間能力の限界とも言えるこのフェアプレーによって、ヨハンソンにはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)から国際フェアプレー賞が贈られた。
ガイスラーとヨハンソンの行為は、多くの卓球選手に感銘を与えて語り継がれ、同様の行為がたびたび実践されてきた。
我々凡人にはとてもこれらのようなことはできない。しかし、本当に賞賛されるべきフェアプレーと、茶番のマナーを区別することぐらいはできるはずだ。