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バルサ化神戸、守備はどうする?
リージョ監督は伊野波雅彦に託す。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byVISSEL KOBE
posted2018/11/07 11:15
ヴィッセルの守備を安定させた伊野波雅彦。イニエスタら豪華攻撃陣を最終ラインで支える。
積極的にスイッチを入れよう。
そこで効いていたのが、伊野波のプレーだ。前に出て行って相手にプレッシャーをかけ、守備のスイッチを入れた。相手に厳しく当たるなど、持ち味である球際の強さも見せた。
前線の選手がボールを失っても、伊野波が全力で走ってアプローチした。奪われたら素早く取り返す役割を務めていたのだ。そうしてゲームの主導権を握り、前半は名古屋にほとんどサッカーをさせなかった。
「大量失点して負けた試合は誰が守備のスイッチを入れるのか不明で、守備が中途半端になっていたし、相手に自由にやらせ過ぎた。攻守のメリハリがなかったんで、まずは自分が守備のスイッチを入れようと積極的にいきました」
伊野波ら中盤の激しい守備に引っ張られたのか、普段は守備が期待できないポドルスキも回数こそ少ないが自陣まで戻った。今シーズンの最終盤に来てベテランのプレーがチームに活気を与え、守備の修正を可能にしたわけだ。
ボランチでプレーしてみて。
とはいえ伊野波にとっては、納得のいくシーズンではなかった。
序盤戦の5節、柏戦までは試合に絡んでいたが、その後は出場機会に恵まれず、10月6日の長崎戦にようやく出番が回ってきた。それもラスト10分での出場で、続く川崎戦も19分間の出場に終わった。それでも腐らずに、練習から球際の激しさを見せて、アグレッシブな守備を監督にアピールした。
そして、名古屋戦のスタメンを勝ち取った。
「リージョ監督になってからボランチでしかプレーしていないので、今までと求められているものが違った。だけど、試合に出れなかった時にアプローチしたものを少しずつ試合に活かせているし、この試合に出られて今までの期間がムダではなかったなと感じています」
ブラジルW杯のメンバーにもなったベテランだが、伊野波は出場した時のために、自分を高める努力を怠らなかった。だからこそ、久しぶりの出場機会で以前と異なるポジションでも目に見えた結果を出せた。