ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
谷原秀人、欧州ツアーでの日常。
「靴下とパンツを毎日洗ってる」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2018/11/08 07:00
笑顔でクラブをチェックする谷原秀人。海外転戦の難しさはこんなところにもある。
環境もコースも日本と違う。
かねて谷原の“ネットショッピング好き”はゴルフ界では知られたところで、賞金王を争った'16年にはアマチュア向けに制作された、飛距離アップのDVDを購入して教材にしたことが話題になった。
「最近はスパイクもネットで買って、日本から持ってきてもらったりしてるよ。いろいろ試せていい」
研究熱心な姿勢の現れではある。ただ、欧州ではそうせざるを得ない理由もある。日本でのように、日々、手取り足取りのサポートがあるわけではない。プレーする国が毎週変わり、その都度難しい戦いを強いられる。そして、周りに実力者が多いのも前提の上だ。
「ヨーロッパのコースは本当に狭いところばかり。それでもみんな、ボールを“置きに”いかない。しっかり振りきって、まっすぐ飛ばしてくる」
上背があり、特に欧州出身選手は上半身が強靭。それでいて、グリーン上でも技術が光る。谷原は本来、パッティングで勝負するプレーヤー。それが戦いの場を変えて苦しみが始まった。
「日本みたいなキレイなグリーンは入るけど、重いグリーンではまったく入らない。“免疫”がない。慣れなんだろうなあ。ラインの読みなのか、打ち方なのか……。なかなか感覚が出ない」
転戦経費は米ツアーより高い。
もちろん、フィールドでの悩みはプロゴルファーに付きまとって然るべきではある。ただ同じくらい、コース外での気苦労が多い。それは20代の時に体験した米ツアーで感じたのとはまた違うものだ。
転戦経費はおそらく米ツアーよりも高くつく。国をまたぐフライトが続き、宿泊代も日本や米国と同じ質のホテルを選ぶならより高額になる。その質もまた問題で、例えばシャワーの水圧が総じて弱い……。一泊、二泊と我慢すればいいわけではないから大変だ。
「イタリアで泊ったところなんか、チョロチョロ……だった。そういう時はゴルフ場で浴びて帰る。なぜかゴルフ場はどこもちゃんと出るんだよね」
日本との往復を繰り返すキャディやマネージャーらと、外国のどこかで落ち合うことも増えた。つい先日も、トルコのイスタンブール空港で、係員のミスリードからターミナルをたらい回しにされ、ヘトヘトになったばかりだった。大きく、重たいスーツケースを転がしながら……。