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北海道がスプリンターの聖地化。
寒さのハンデを上回る魅力とは。
posted2018/11/04 08:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
今シーズンのトラック競技も、10月上旬で主だった大会が終了した。
トラック競技の中でも、短距離について、シーズンが盛んになった頃から話題になっていたことがある。
北海道から次々に有望な選手が育ってくることだ。
少し前で言えば、2008年の北京五輪4×100mリレーの銅メダリスト、高平慎士の名前が挙がる。さらに女子では、北京から3大会五輪出場、今なお第一人者である福島千里をはじめ、北風沙織、100mハードルの寺田明日香も北海道出身だ。
今シーズンは、御家瀬緑(みかせ・みどり)が頭角を表した。高校2年生の御家瀬は、日本選手権に初めての出場にして100mで決勝に進出、4位に入ったのである。この好成績もあって、アジア競技大会のリレーメンバーにも選出。高校生では唯一の代表入りで、鮮やかな台頭ぶりで脚光を浴びた。そのアジア競技大会では、男子200mで23歳の小池祐貴が金メダルを獲得している。
冬の長さはハンデだけでない?
これだけ次々と北海道出身の選手が活躍するのだから、注目が集まるのも無理はないだろう。ただ、北海道が陸上に向いているとは言いがたい。
なにより冬の季節になれば、降りしきる雪が練習での障壁となる。練習するための場所として、不利な条件だと捉えられるのも、決して無理はない。競技は変わるが高校野球でも、北海道の高校はハンデがある、という話を以前、聞いたことがある。
陸上でもこのマイナス点が当てはまる一方、“そうではない”と北海道の陸上関係者から耳にしたことがある。他の地域よりも冬が長く、練習に制限があることで、過度な練習も防げるのだと言う。つまり、練習しすぎでつぶれることがないのだ。
また冬場に練習しづらいという条件では、指導者の能力も試されることになる。代表例が、福島千里らを育てた中村宏之氏だ。