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福原愛が日本卓球を変えた2つのこと。
早期教育と、中国語を覚える大切さ。
posted2018/11/01 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
福原愛の引退には、感慨深いものがある。
私は彼女のお母さんの千代さんと同郷ということもあって、ずいぶんいろいろな話を聞かせてもらった。
ロンドン・オリンピックの時、女子団体で日本が銀メダルを獲得した後、喜びを分かち合った時のことは忘れがたい。
大げさかもしれないが、福原愛は日本卓球界の「中興の祖」だと思っている。
彼女は「ふたつのこと」で、日本の卓球を変えた。
ひとつは、早期教育。
もうひとつは、中国との関係性、特に中国語の習得である。
1年で2000時間にも及ぶ練習
現在、世界の卓球界を見渡したとき、中国に対抗できるポテンシャルを持っているのは、日本だけである。
それが可能になったのは、日本の家庭で卓球の早期教育が行われ、これがシニアの強化につながっていたからに他ならない。その先鞭をつけたのが、福原愛、福原家である。
福原は卓球をしていた兄に憧れ、3歳から卓球に真剣に取り組んだ。福原の母、千代さんは語る。
「学校が夏休みになれば、それこそ朝の9時から夜の9時まで、ずっと練習していました。私は愛が卓球をしたいというので、それに付き合っていただけなんです。自分にはやりたいことがたくさんありましたから。だから、愛がやめたいといったら、いつでもやめたと思います」
夏休み、冬休みの時期は、昼食休憩を除けば1日10時間。1カ月で300時間。
学校がある時期でも、1日に5時間は練習時間を確保し、そこに週末の土日20時間を加えてざっくり計算すると1週間で40時間になる。つまり、1カ月で160時間ほど。
足し上げると、1年間でおよそ2000時間を幼少期から練習にあててきたわけだ。