【NSBC補講IV】皆川賢太郎のスキー革命論BACK NUMBER
冬季アスリートに突き抜けた個性を。
皆川賢太郎が与える“刺激”とは。
text by
皆川賢太郎Kentaro Minagawa
photograph byGetty Images
posted2018/10/31 10:30
10月27日にアルペンスキーW杯が開幕した。女子ジャイアントスラロームでは安藤麻が日本人最上位に。
渡部、高梨のような個性を。
選手の競技に対する意識や考え方、向き合い方の平均点は昔に比べると、年々上がってきていると実感しています。
ただ、一方で“プロフェッショナル”というか、突き抜けている人が減り、平均的になっているという印象も。たとえば、フィジカル面も栄養もある程度までは鍛え、自己管理を行っているのですが、一定ラインを超えると、それ以上は求めなくなる。そういった局面では、「それは誰もがやっていることなんだよ」と、あえて苦言を呈すことも大事だと考えています。そこから先に突き抜けることこそが“個性”だと考えているので。
もちろん、ノルディック複合の渡部暁斗選手やジャンプの高梨沙羅選手など、独自の考え方を確立している選手には、私たちが特別指導する必要はまったくありません。彼らにはすでに“個性”がありますから。
そういった意味で、今、SAJとしてできる最も重要なことは、“個性”を生み出すべく、刺激を与えることだと考えています。たとえば、これまで隣のチームが何を行なっているかも無関心でした。お互いライバルだと思っているから、情報交換や提供も行っていませんでした。しかし、今はすべて誰にでも見えるよう明瞭化し、お互いに刺激を与えるよう促す。
マイナーという現状打破を。
マイナーという現状を払拭したい意図が込められ、2シーズン前からシーズン終了後に開催している「SNOW AWARD」も、スポンサーやメーカーの方々に、自分たちが支援している選手たちに価値があることを実感していただくとともに、選手のモチベーションアップや刺激を与えたいとしています。
同じ土俵には立っていますが、有名か有名ではないかが、あの場では一目瞭然になる。「私だってこの人達と同じフィールドで頑張ってるのに」という悔しさが、「(自分には)何が足りないんだろう」という思考回路や奮起へとつながっていくのです。
1年目の「SNOW AWARD」では、サイズが合わないスーツやドレスを着用していた選手もいました。しかし、2年目には誰ひとりそういう選手はいなかった。つまり、「場が人を育てる」ということです。私はこういった経験は非常に重要だと考えているんです。
選手たちが、「俺は俺でいいんだよ」と周りを知ろうとしないと、自分のコミュニティでしか生きられなくなります。その壁をどんどん取っ払っていくと、意外と自分って小さな人間だと理解できる。そのように選手たちの個性を出していけたらいいなと私個人的には考えています。