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作家・中村航のセコンド体験記。
ボクシングは僕らの隣にあった。

posted2018/10/21 09:00

 
作家・中村航のセコンド体験記。ボクシングは僕らの隣にあった。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

田宮真拓選手のセコンドについた中村航さん(左)。表情からも緊張感が伝わってくる。

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中村航

中村航Kou Nakamura

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 1ラウンド開始70秒の衝撃――。

 2018年10月7日、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級準々決勝にて、井上尚弥がたった3発のパンチでKO勝利を飾った。

 以前からそうなのだが、井上尚弥はもう、ボクシングファンだけが騒いでいればいいレベルの存在ではない。いわゆる“世間”にも、もっともっとざわついてほしい。だって何十年もフィクションの世界にだけいた最強の日本人ボクサーが、今、実在のものとして姿を現しているのだ。

 この日、横浜アリーナのスタンド席で衝撃に打ち震えていた僕だが、この記事のメインはそのことではない。同じ日、午前中から夕方にかけて、ジュニア・チャンピオンリーグ(JCL)全国大会が、大森ゴールドジムで行われていた。僕は中学3年生の選手のセコンドとして、この大会に参加することになった。

井上尚弥につながるU-15の大会。

 今回が第1回となるJCLだが、前身は10年の歴史がある「U-15全国大会」だ。もともとキッズボクシングの広がりがあって、横浜の光ジムを筆頭に全国各地のプロボクシングジムでスパーリング大会が行われるようになった。その動きを受けて「U-15全国大会」が後楽園ホールで開催された。第1回の大会には、15歳の井上尚弥が参加し、KO勝利をして優秀選手賞を受賞した。

 JCLとWBSSは遠いけれど、ちゃんと繋がっているものごとなのだ。

 今年からジュニア・チャンピオンリーグと名を変えた大会は、内容も大きく変わった。まずは年齢幅が広がり、U9、U12、U15、U18、と4つのカテゴリーに分かれる。予選を勝ち抜いた選手が、それぞれ男女体重別に試合をする。

 U12でいえば、試合時間は1分×3ラウンドだ。体重別に試合は行うが、減量は禁止されている。ヘッドギアや胸部保護パッドを着用し、また、複数回の健康チェック、早期レフェリーストップ、厳格な反則注意、と、安全性には特別な配慮がされている。この大会は特に防御技術の向上、そしてボクシングの普及を目的とした大会なのだ。

【次ページ】 U9といえど、ちびっこではない。

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