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村田諒太、夢のラスベガスで散る。
今後は「ゆっくり考えればいい」。
posted2018/10/22 17:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
AFLO
日本のボクシングファンにとって、何より村田本人にとって、この敗戦は「無念」という一言に尽きるのではないだろうか─―。
WBA世界ミドル級チャンピオン、村田諒太(帝拳)が20日(日本時間21日)、中学生のときから夢見たラスベガスのリングで散った。
ランキング3位の指名挑戦者、ロブ・ブラント(米)を迎えた2度目の防衛戦は大差判定負け。1年間守った王座からあっけなく陥落した。著者はDAZNで観戦。以下、現地からの情報はボクシング・ビート誌の島篤史編集長に頼ったレポートである。
まずは試合を振り返ってみよう。試合は初回から挑戦者が優位に立った。いつものようにガッチリとガードを固める村田に対し、ジャブ、ワンツー、左右のボディブローを躊躇なく繰り出していく。村田に的を絞らせないようよく動き、しっかり手を出して、前に出たい村田を止めようというはっきりした意図が伝わってきた。
村田もこれは想定内だったろうが、意外だったのは自信を持っていたリードの差し合いで劣勢に回ったこと、そして思いのほかパンチを被弾したことだ。右アッパー、右ストレートを決められ、ワンツーから返しのジャブも食らってしまう。2回が終わった時点で、チャンピオンの顔は早くも腫れ、鼻血で赤く染まった。
積み重なったミスブローの山。
村田は劣勢を挽回しようと、3回から圧力を強めた。接近して左ボディブロー、得意の右ストレートを打ち込み、5回にはワンツーの連打で挑戦者を押し込む。ブラントが打ち合いに応じて試合はヒートアップ。ここから村田がペースをつかんでいくかに思われたのだが……。
後半に勢いづいたのはむしろブラントだった。村田は懸命にチャージしていくものの、ブラントをつかまえることができない。逆にタイミングのいいジャブや、右ストレートをコツコツと被弾しながらラウンドを重ねた。得意のワンツーでブラントに襲いかかるものの、かわされ、はじかれ、ミスブローの山を築いてしまう。
帝拳ジムの浜田剛史代表は試合後、「あれだけオーバーペースになるとがくんと落ちるものだが……」と首をひねったが、ブラントのペースは一向に落ちない。ラウンド間のインターバルで映しだされる両者の表情を見ると、疲れているのはむしろ村田だ。