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大坂なおみ、100点満点の凱旋勝利。
鬼門の「優勝直後」を悠々と突破。
posted2018/09/20 11:20
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
AFLO
優勝した次の大会が難しいというのはテニス界の定説だ。特に四大大会は調子のピークをそこに合わせるため、次の大会まで心身のコンディションを維持するのは簡単ではない。
過去1年間に四大大会で優勝した女子選手について、次に出場した大会の成績を調べてみた。
2017年全米優勝のスローン・スティーブンスは次の中国・武漢で1回戦敗退。今年の全豪で優勝したキャロライン・ウォズニアッキはサンクトペテルブルクでベスト8。全仏優勝のシモナ・ハレプはウィンブルドン3回戦敗退。さらにウィンブルドン優勝のアンゲリク・ケルバーはモントリオールで初戦の2回戦敗退――どれも不本意な成績だ。
スティーブンスに至っては、その後、翌'18年の全豪までシングルスは全敗だった。
もちろん気を抜くわけではないが、歓喜を味わい、祝福を浴び、メディアやファンに追われ、スポンサーにかかわる仕事をいくつもこなせば、選手は心身の平衡を保つのが難しい。
そもそも7戦を戦った心身のリカバリーには相当の日数を要する。技術的にも、2週間ショットの好感触を味わったあとだけに、小さな違和感でもあればそれが重大な異変に思われ、調子を狂わす選手もいるだろう。
無責任なメディアやファンの攻勢。
最も手強い敵は、期待の重さか。グランドスラムで勝ったのだから、もう、どの相手にも勝てるだろうと見る人は多い。無責任に期待するメディアやファンの攻勢をどうかわすかは、特に日本選手初の四大大会制覇という看板を背負った大坂には重い課題と見られた。
東レPPOの会場となったアリーナ立川立飛は異様な雰囲気だった。全米女王をひと目見ようと集まったファンは、文字通り固唾をのんでコートの大坂とドミニカ・チブルコバを見つめた。
テニス観戦に慣れていない方も多かったのだろう、女王のオーラに気圧されたのか、あるいはテニス観戦独特の堅苦しさに戸惑ったのか、観客は息をひそめてコートを見つめる。カメラのフラッシュが自動発光するのを注意するアナウンスが繰り返され、観戦慣れしていないファンはさらに縮こまった。