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大坂なおみ、100点満点の凱旋勝利。
鬼門の「優勝直後」を悠々と突破。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2018/09/20 11:20
グランドスラム制覇の祝祭から真っ先に抜け出していたのは、当の大坂なおみ本人だった。彼女のキャリアはまだ始まったばかりなのだ。
大坂が覚えた、相手にミスを強いるプレー。
つばを飲み込む音さえ聞こえそうなアリーナで、大坂は四大大会女王になって初めての試合に臨むことになった。
ところが、大坂はまるで試合形式の練習のように、すっと試合に入り込んでいった。冒頭の相手のサービスゲームをあっさりブレークし、一気に4-0と引き離した。一幕物の一人芝居。所要時間59分のストレート勝ちだった。
エースは10本、第1セット5-2からのサービスゲームで3連続エースを決めるなど、大事なところでの一撃が目立った。
「サーブがうまくいった。不利になりそうな場面でサーブが救ってくれた」。大坂は何ごともなかったかのようにプレーを振り返った。
チブルコバは昨年3月に世界ランキング4位をマークした実力者だが、大坂のショットに押され、「あわてる形になってしまった」とミスを連発。「打ち負かされたというより、自分のミスが多かった」と悔しがった。
だが、まさにその点に対戦相手の成長があったのだ。チブルコバは「2年前の対戦ではもっとミスが多かったが、今日は我慢のプレーをしていた」と大坂を評した。今の大坂は力任せのプレーをする選手ではない。クリーンなウィナーも少なくないが、質の高いショットで相手にミスを強いることを覚え、ひと皮むけた。
確かにラリーで圧倒したが、チブルコバの言うように、打ち負かそうというのではなく、今の大坂らしい、クレバーな、無理をしないプレーが得点源となった。
ざっくりした質問への100点満点の答え。
経験豊富なウォズニアッキやケルバーでさえうまくコントロールできなかった“次の大会”の初戦を、こんなにあっさりとクリアしてしまうのだから恐れ入る。
大坂は試合後の記者会見で採点を求められると「80%くらい。自分の限界がどこにあるのかまだ分からないので、今日は100%だとは言えない」と答えた。ざっくりとした質問に対する100点満点の応答だった。
攻める気持ちが強かったのか、と問われると「そういうわけではなかった」と素っ気なかった。今やろうとしているプレーを当たり前のように披露して、当たり前のように勝った、そういう試合だった。