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大坂なおみ、100点満点の凱旋勝利。
鬼門の「優勝直後」を悠々と突破。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2018/09/20 11:20
グランドスラム制覇の祝祭から真っ先に抜け出していたのは、当の大坂なおみ本人だった。彼女のキャリアはまだ始まったばかりなのだ。
「ビジネス」をこなした凱旋勝利。
全米で優勝した直後の大会でたくさんの観客が詰めかけたが、と聞かれるとこう答えた。
「プレッシャーは感じなかった。どちらかと言えばエキサイティングだった。たくさんのお客さんがきてくれて感謝の気持ちがあり、応援がうれしかった」
どの言葉からも、完璧なマインドセットで初戦に臨んだことが見てとれる。全米のタイトルが自信になったのは当然として、精神面での準備の大切さを理解し、実践しているのだ。20歳の選手がまた1つ大きな武器を得たと言ってもいい。
大坂のサービスエースとダウン・ザ・ラインに突き刺すストロークは観客のため息を誘った。東レPPOでは以前、選手を応援するファンの思いが、そのミスを悔しがるため息の大合唱となり、当の選手を怒らせたことがあったが、もちろん、この試合でファンが漏らしたのは、大坂のショットが誘う驚きのため息だった。
ファンの目には、強烈なサービスエースやグラウンドストロークの美しい弾道が焼き付けられただろう。祖父母が暮らす日本のファンを喜ばせるという意味でも、大坂はいい仕事をした。彼女のいうところの「ビジネス」を完璧にこなした凱旋勝利だった。