マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
吉田輝星が浴びた韓国流ホームラン。
日本で流行らない「引き腕打法」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/09/08 08:00
国によって野球の「常識」は驚くほど違う。その差異の中から柔軟に最高の方法を見つけていきたいものだ。
日本でも昔はこの「引き腕打法」だった。
韓国チームの「打ち方」は、ほとんどの選手がこのスタイルだった。
前の腕、つまり「引き腕」で目一杯バットを引っ張っておいて、そこからリストを効かせてバットヘッドを返す。
私が学生時代に習った打ち方も、たまたまこの「引き腕打法」だった。
前の腕一本で振って、ビュンと音がするぐらい素振りしてこい!
「打倒江川(当時・法政大)」を掲げる監督さんにハッパをかけられて、ずいぶん左手一本で振り込んだものだ。
確かにやってみると、引き腕が効いたときは打球がよく飛んだ。
ノックをやってみると、もっとよくわかった。引き腕を効かせて、前を大きくして振り抜くと、簡単に外野の頭を越えていく。打球を眺めながら、自分自身がいちばんビックリしていたものだ。
「後ろの腕で押し込む」は万人向けなのか。
投手の「投球フォーム」と同じで、打者の「バッティングフォーム」というのも、いちばん肝心なのは「感覚」である。
自分がボールを投げてみて、バットを振ってみて、「あ、これだな……」と体が納得するかどうか。
体型と体のメカニズムは十人十色。みんな集めて、こう投げろ、こう打て。もうそういう時代じゃない。
「後ろの腕で押し込め」と教わって、言われた通り押し込むと、どうしてもバットをこねてしまう。ボールを引っかけてしまって、ジャストミートできない。
そんな「カベ感」に戸惑う人がいたら、逆に引き腕で引っ張る打ち方を試してみたら、どうだろう。
おそらく、後ろの腕が強すぎるためにこねてしまうのだろうから、前の腕を懸命に強くすることで、両腕のスイングバランスがよくなって、バットヘッドが真っ直ぐ走るようになるのでは。