野球善哉BACK NUMBER
菊池雄星や吉田輝星と同じ、
浦和学院・渡辺勇太朗のある動作。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/16 16:30
状況によって出力するパワーを自在に操る。渡辺勇太朗の完封勝利はエースらしさを存分に見せたものだった。
菊池雄星がギアを上げる瞬間とは。
「チームに勢いを持っていきたいとき、相手の勢いを止めたいとき、逆転して欲しいとき。三振を取るとチームに一体感が出る。そのとき、ギアを上げます」
そう語っていたのは昨季のパ・リーグ最多勝投手、菊池雄星だ。
試合の勝負所を自身で見極めると、ストレートはその日最速を計測するし、スライダーも一番のキレを見せて、相手打者のバットは空を斬る。
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ただし、一言にギアを上げるといっても「力を入れる」という意味ではない。
菊池はこう続ける。
「“ショルダーステイ”といって左肩を意識的に下げて投げているんですが、三振を狙いに行く時は、そのショルダーステイをいつもより意識する感じです」
投球フォームに入る動作を意識することで球に違いを生み出す。
もともと菊池はフォームを始動して体重移動していく際、投げる方の少し腕を下げている。これを“ショルダーステイ”というのだが、ピンチなどの三振を狙いに行く時は深く下げる。実際には誤差程度の違いしかないのだが、パワーを生み出すことを意識しているのだ。
金足農・吉田は3段階用意している。
今大会、菊池と同じく投球フォームに違いを出してギアを上げていたのが、金足農のエース・吉田輝星だ。
今大会で2試合を完投し、18イニングで27三振を挙げている吉田は、試合の場面によってギアを3段階に使い分けていたと話している。
「ギアを上げるというのは力を入れるということではないんです。身体の使い方を大きくしたり変えたりすることです。ギアを入れようとすればするほど、力んじゃうことがあったので、力まないために、僕はボールを前で離す。叩きつけるイメージを持って投げています。ここは絶対に抑えなきゃいけないバッターのときはそうしています」