野球善哉BACK NUMBER
高岡商の試合巧者ぶりに痺れた一戦。
佐久長聖に1点差勝ちした、その中身。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2018/08/13 17:30
4回裏、高岡商無死一、三塁の直後の場面。三塁前へのスクイズで佐久長聖が手間取る間に、一塁走者だった鞍田は三塁まで進んでいた。
スキは無かったはずの佐久長聖が……。
試合に入り込んでしまうと、目先のプレーに集中しがちだ。
普段から、ヒット1本で走者がホームに帰ってくるようなケースでセカンド走者をホーム上で刺す練習ばかり繰り返していると、点差も考えずにそのプレーに躍起になってしまうことがある。この場合、最悪のケースとしては、中村が危惧する通り、本塁の生還を許した上に打者走者の二塁進塁までも許してしまう時があるのだ。
佐久長聖はそういうチャンスを見逃さない野球をするチームだった。指揮官の藤原は前任のPL学園の監督をしていたころから「ランナー二塁のケースでヒット1本を打つだけでなく、さらにランナー二塁のケースをつくるのが理想」というスキのない走塁を身上としていた。
接戦で勝つ方法を知る高岡商。
ADVERTISEMENT
守備面ではスキを突かれて、攻撃面ではスキを見せてくれなかった――藤原からしてみれば、そんな高岡商の戦いぶりに「試合巧者」と思わず表現してしまっていたのだろう。9回は1点差にまで詰め寄りながら、最終的には5-4で逃げ切られたのだ。
1点差の逃げ切り勝利に吉田監督はこう振り返っている。
「生徒が落ち着いていました。4点リードで後半になってその点差を守りきろうというのではなく、次の点を取りにいっていましたし。
ただ、1点を取られてもアウトを増やしていくことが接戦では大事になってきます。生徒たちには点数を取られてもアウトを増やしていけば試合になるぞという話を新チームの頃からしてきて、当初はそれができずにビッグイニングをつくられることがよくありましたが、ポイントが分かるようになってきましたね。(この勝利は)自信にしていいのかなと思います」