野球善哉BACK NUMBER
仙台育英、敗れてなお伝わる哲学。
須江航監督が導入した規律と数字。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2018/08/12 17:30
須江監督の就任で、仙台育英の野球スタイルは大きく変化した。甲子園初戦で敗れはしたものの、手にしたものは大きかったはずだ。
「野球は献身が必要なスポーツ」
須江は就任してから、これらの要素を必死に教え込んできた。
就任からたった半年でチームを甲子園に導いた事実が、須江の手腕を証明しているだろう。
「野球は献身が必要なスポーツだと思っています。そしてやり切る力が何事にも必要だということで、『99は0』だという厳しい言い方もしてきました。それは勉強に対しても同じで、やると決めたラインまでしっかりやりきろうと。
全力疾走とカバーリングはゲームを勝ちきる野球の本質だと思っていますし、走姿顕心(走る姿に人の心が顕われる)をテーマにしてきて、選手たちは頑張ってくれたと思います」
浦和学院に0-9で敗れたことは、新生仙台育英にとって今後への財産になるだろう。
この試合は悪い面もでたし、目指してきたことの一端も出た。
ミスを少なくすることを目指してきたが、この日は結果として4つのエラーが出てしまった。しかし一方で、1番の熊谷大貴が5回、右翼前安打から、相手のスキをついて二塁を陥れるプレーも見られた。
来年への目標は「スケールの大きな野球」。
須江はこういって次への目標を掲げた。
「ことしの夏は勝ちきる野球をしてきました。どういったことで点数が入り、防げるか。野球の本質を理解することに時間を割いてきました。今日は少し守備が乱れてしまいましたが、熊谷の走塁など希望もみえました。
ただ、これから新しい仙台育英の歴史をつくるためには、もう少しスケールの大きな野球にしていかないといけないと思っています。もともとの伝統に、今年は新しいエッセンスが加わった。来年はもう少しスケールの大きさを身に着けたいですね。1年間の練習メニューからプランニングしてつくり上げたい」
新しい世代の指導者の登場は、高校野球界に新たな風を呼んでくれるかもしれない。須江航という、新しい息吹に期待したい。