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仙台育英、敗れてなお伝わる哲学。
須江航監督が導入した規律と数字。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2018/08/12 17:30

仙台育英、敗れてなお伝わる哲学。須江航監督が導入した規律と数字。<Number Web> photograph by Kyodo News

須江監督の就任で、仙台育英の野球スタイルは大きく変化した。甲子園初戦で敗れはしたものの、手にしたものは大きかったはずだ。

全力疾走とカバーリングを導入。

 その取り組みの肝となるのが全力疾走とカバーリングだ。

 意外かもしれないが、この点において昨年までの仙台育英は意識が薄かった。

 中学時代から須江の指導を受けてきた三塁手の鈴木佳祐はいう。

「不祥事があって、最初は不安でした。今までやってきたことができなくなるんだというストレスがありました。でも、僕は須江先生の野球を知っていたし、より勝てるチームになるだろうなと思いました。
 須江先生は『全力疾走とカバーリングがなくては野球は成り立たない』という考えの人で、今までエラーがあった時は無条件で走者が出ていたんですけど、今はそのミスが少なくて済んだり、逆にカバーをしていることでミスがチャンスになることも増えてきました」

自由奔放さが、魅力であり隙でもあった。

 昨年までの仙台育英は、あらゆる意味で自由だった。

 鈴木によれば「佐々木先生のサインは『打っていい』と『バント』の2つしかない」というほどで、選手が思う存分力が発揮できるプレーをさせていた。細かいことを言わない佐々木前監督の指導理念が、選手の持ち味を引き出していた。

 2008年に甲子園に出場した橋本到(巨人)はプロのスカウトたちに見せつけるようなプレーをグラウンドで繰り返していたし、2013年の上林誠知(ソフトバンク)、2015年の平沢大河ら個性の強い選手が、仙台育英らしさだった。

 しかし、自由さは隙でもあった。

 それは、全力疾走とカバーリングの不足でもわかる。打席では、凡打になると全力疾走を怠ることもあった。自由さが個性的な選手を育てる一方で、ここ一番でのスキになっていたのである。

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