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仙台育英、敗れてなお伝わる哲学。
須江航監督が導入した規律と数字。

posted2018/08/12 17:30

 
仙台育英、敗れてなお伝わる哲学。須江航監督が導入した規律と数字。<Number Web> photograph by Kyodo News

須江監督の就任で、仙台育英の野球スタイルは大きく変化した。甲子園初戦で敗れはしたものの、手にしたものは大きかったはずだ。

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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Kyodo News

 試合後のインタビュールームの雰囲気から違っていた。

 2年連続出場となる仙台育英が、初戦となった2回戦で浦和学院に敗れた。昨夏のベスト8のはるか手前で大会を去ることになったが、まるで異なるチームのような戦いに、新しい息吹を感じた。

 その息吹の正体は、今年1月に就任した指揮官の須江航だ。

 須江は2006年に仙台育英の系列にあたる秀光中学野球部の監督に就任し、チームを全国大会にたびたび導き、優勝も経験している。いわば、中学野球界で名を馳せた指導者のひとりだ。

 昨年12月、仙台育英は野球部員数人も関わった学内不祥事が発覚した。後に半年間の対外試合禁止処分が発表され、その責任を取る形で前監督の佐々木順一朗氏が職を辞し、須江が後任についた。

 須江は監督に就任してからの日々をこう語る。

「たくさんの素晴らしい伝統がある学校で、佐々木先生や竹田(利秋)先生が創ってこられた歴史があって、今回100回大会を迎えたわけですが、その素晴らしいものは残していきたい、と。そのうえで新しい取り組みをやってきました」

四球と三振の比率や被進塁率を重視。

 新しい取り組みの1つが、データとして重用すること。例えば今年のチームは3人の捕手を試合中に併用したが、「この方が失点率が下がる」と分析してのことだった。

 須江はいう。

「守備面でいえば、1つの四球あたり、いくつの三振が取れるか。また、ランナー一塁からの被進塁率も重要視しています。ランナー一塁からいかに粘って進塁させないかを考えます。逆に攻撃面では、いかに進塁を狙えるか。長打を打つこと、1つのチャンスで2つの塁を奪えるか、速さ、巧みさを身に着けないといけない」

【次ページ】 全力疾走とカバーリングを導入。

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