野球善哉BACK NUMBER
敦賀気比左腕・木下元秀の3死球。
木更津総合封じの生命線が代償に。
posted2018/08/10 16:45
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
試合を決定づける走者一掃のスリーベースが生まれたのは、6回表のことだった。
1-0でリードする木更津総合は、1死満塁から9番の小池柊稀(しゅうき)が押し出し死球で1点を追加。続く1番の東智弥は2球目のカーブを捕らえ、右中間を深々と破った。走者全員が生還して試合の大勢を決めた。
東の痛烈な一打は、五島卓道(ごしま・たくどう)監督が「史上最強」と称する木更津総合を象徴する思いきりのいいバッティングだった。
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しかし5回まで1-0と均衡していた試合には、もう1つ大きなポイントがあった。
それは、打者のインコースを巡る攻防だ。
東が走者一掃の適時打を放つ前に、9番の小池は死球で1点を勝ち越しているが、この際のボールが勝負を分けた。
木更津総合はこの試合で4つのデッドボール(木下からは3つ)を数えたが、これには理由がある。
敦賀気比のエース・木下元秀が強気にインコースをつくピッチングを身上としているからである。
変化球を生かすためのインコース。
182センチ85キロの大型左腕・木下。彼の最大の持ち味は100キロ台のカーブ、スライダーやチェンジアップなどの変化球で相手を幻惑していく。それを生かすために欠かせないのがバッターの懐へのストレートだった。
敦賀気比の捕手・杉森圭輔は言う。
「相手打線はどんどん振ってくるので、真っすぐと変化球の緩急を使って抑えていくことを考えていました。逃げて四球でランナーを溜めてはいけないし、真ん中にボールがいくと打たれる。だから、インコースを使っていかないと思っていました」
木下のストレートは130キロ台に満たないものの、打者に両サイドを意識させることで、的を絞らせない。遅い変化球で幻惑するには、死球を恐れない大胆な投球が必要なのだ。
ただ、序盤からストレートのコントロールがわずかに外れた。