野ボール横丁BACK NUMBER
「10点取られても打ち合いなら」
折尾愛真の想定を越えた日大三打線。
posted2018/08/10 17:45
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
破格の心構えだった。
「10点は覚悟していたので」
初出場の折尾愛真の1番・長野匠馬(しょうま)は、強打の日大三を相手に迎え、そう思ったという。それでも十分、勝機はあると思っていた。
根拠はある。この夏、折尾愛真は、北福岡大会で6試合を戦い67安打、55得点と打ちまくった。決勝では飯塚相手に12-9と打撃戦も制している。チーム本塁打数10本は、参加校中最多タイ。フルスイングが信条の北九州の新興勢力だった。
北福岡大会で3本塁打した長野は続ける。
「日大三は飯塚よりは上だと思っていたので10点ぐらいは取られるだろう、と。でも打ち合いなら負けないと思ってたんですけど……」
折尾愛真は、初回に1点を先制したその裏、先発した120キロ台のエース小野剛弥が4四死球と乱れ、1アウトしか取れずに降板したこともあり、いきなり7失点。1-7と一気にひっくり返された。
ひと冬で体重が24キロ増えた選手も。
ただ、それでもベンチはまったく怯んでいなかったという。奥野博之監督が話す。
「ぜんぜん落ち込んでなくて、むしろ、よっしゃという感じだった。ただ、逆に力んでしまったかもしれませんね」
チームの打撃開眼のきっかけは、冬の「食トレ」だった。
1時間に一回、400~500グラムのご飯をシーチキンなどと一緒に食べるようにし、各部員ともに体重が急増。チーム内で最大となる68キロから92キロの増量に成功した5番・野元涼は、北福岡大会で6本塁打と大当たり。食トレの効果をこう語った。
「春先、打球がぜんぜん違った。この春からだけで16本打ちました。体重が増えた以外は何も変わってない。フォームも変えてません。高校入るまで練習試合でも1本もホームランを打ったことがないのにそこまで変わったのは体重以外、考えられません」