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智辯和歌山を抑えた「4本の矢」。
近江・多賀監督は継投マスター。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKyodo News
posted2018/08/07 17:00
近江高校の多賀監督が「大博打」と表現した継投策に火をつけたのは先発の松岡裕樹だった。
2001年夏には「3本の矢」で準優勝。
打線も滋賀大会では0本だったホームランが3本も飛び出し、優勝候補相手に7-3と快勝。試合後、多賀監督は興奮しっぱなしだった。
「近年は、甲子園でもっとできるはずなのにという試合が多かった。今日は150点です。こんな試合は初めてじゃないですか。こういう強豪に、これだけの試合ができたというのは。うちの歴史の1ページに残るような試合をしてくれました。監督(の力量)ではすべて負けてるので、おまえらがミラクルを起こしてくれと言っていました」
'01年夏、準優勝したときは3人の継投策で「3本の矢」と呼ばれた。そんな継投マスターである多賀監督も4人の継投策で勝った経験はないという。
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「これで勝ちましたからね。これも1つの形ですよね。次の試合も、先発を松岡にするか林にするか考えます。この暑さですから、1人のピッチャーではしんどい。私も今日、途中から熱中症気味で、ぼーっとしてたくらいです」
「勝ちゃあ、おまえら上までいくぞ」
この日は、新たな継投パターン「4本の矢」が誕生した瞬間でもあった。全体的な選手の潜在能力は'01年の準優勝のときと比べても「数段上」だという。
継投策を必勝パターンとする秘訣はシンプルだった。
「2番手、3番手になっても力が落ちないこと。選手がそろったからできる。やろうと思ってできるもんじゃない」
今後の抱負を聞かれ、多賀監督はこう息巻いた。
「もう怖いもんなしですね。選手にも『(智辯和歌山に)勝ちゃあ、おまえら上までいくぞ』って言ってたので」
奇跡を起こした「4本の矢」で、滋賀県勢初となる全国制覇を本気でねらいに行く。