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智辯和歌山を抑えた「4本の矢」。
近江・多賀監督は継投マスター。
posted2018/08/07 17:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
2本が3本になり、3本が4本になった。
「大博打でいきました」
近江の多賀章仁監督は、試合後、気持ちを高ぶらせながら振り返った。
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この春の選抜大会は2人の左腕、2年生の林優樹が先発し、エースの金城登耶が抑えるという継投策で挑んだ。この夏の滋賀大会は、2人の間に急成長した本格派右腕・佐合大輔を挟み、3人の継投策で勝ち抜いた。
甲子園ではこの3人に、滋賀大会では1回しか投げていない右サイドハンドの松岡裕樹が加わった。
松岡(右横手)→林(左)→佐合(右)→金城(左)。
これが甲子園用、もっといえば智辯和歌山用に編成された近江の新継投策だった。
「相手が智辯和歌山じゃなかったら」
「相手が智辯和歌山じゃなかったら、滋賀大会と同じように3人でいってたでしょうね。うちの持ち味は投手力。今日は、それを前面に出していこうと思った。
向こうは王者ですから。こちらはノープレッシャー。捨て身の気持ちでいける。松岡は経験が浅いので、先発しか投げさせるところが思いつかなかった。それに相手の高嶋(仁)監督は、当然左の先発を予想してくると思ったので、思い切って松岡にかけました」
その松岡が初回、無失点で切り抜けて波に乗った。
「立ち上がりからストライクが入ってましたからね。安心しました。松岡は横からでも140キロぐらい出る。はまるとすごいんですよ」
継投のタイミングとして決めていたのは「前半は松岡と林、後半は佐合と金城」という大枠だけ。結果的に松岡2回、林3回3分の1、佐合2回3分の2、金城1回とほぼ想定通りに分担し、強打の智辯和歌山打線を3失点でとどめた。