藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
藤田俊哉がW杯で得た成長のヒント。
森保“兼任”ジャパンが進むべき道。
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph byShigeki Yamamoto
posted2018/07/31 17:00
サンフレッチェ広島でJ1制覇を3度成し遂げた森保一監督。日本代表で世界と伍するための手腕を発揮できるか。
グリーズマン、カンテの貢献度。
決勝を戦った選手の個の力を振り返りたい。まず、大会を通して成長を続け優勝を飾ったフランス。才能豊かな若手と経験豊富なベテランが融合しチーム力が増した。
グリーズマンはその中心にいた。点取り屋でもある彼は、決勝でもプレッシャーのかかる状況でPKを決めるなど大会4得点という結果を残した。
他にもムバッペやポグバらタレントが豊富だったが、彼らを後方から支えたのがカンテだ。彼はこのチームに欠かすことのできない選手だった。派手さはないが、豊富な運動量と鋭い出足で攻守のバランスを取り、フランスの中盤を支えた。タイミングよくボールを奪う能力に長け、相手の攻撃の芽を摘むインターセプトからの縦パスは攻撃へのスイッチともなった。
彼のように中盤を1人でカバーしてしまう存在は、過去のフランス代表にもいた。デシャンやマケレレといった選手だ。なぜ、フランスからあのようなタイプが生まれるのか。守備的MFに求める要素や、人材育成&発掘など、興味深い点は多くある。
特に近年の守備的MFは、高さを含めフィジカル面を考慮した起用が主流となっている。その中で小柄な守備的MFが活躍できるフランスの選手評価基準や、中盤の組み合わせで重視する点を知りたいとの思いが強くなった。
モドリッチは素晴らしいお手本に。
準優勝のクロアチアは育成の成果といえる選手で構成されていた。その象徴が、小さな体で活躍し続けているモドリッチ。確かな技術をベースに、いかなる状況においても全力でプレーする。
攻撃では積極的にゴール前へ飛び出すプレーで得点に絡み、守備では身体を投げ出して相手のチャンスを潰す迫力もある。豊富な運動量を武器に攻守両面で活躍。そのクレバーなプレースタイルは、体格的にも近い日本人選手の素晴らしいお手本になる。
クロアチアは他にもラキティッチやマンジュキッチらは言うまでもなく、ペリシッチ、レビッチ、ロブレン、ビダ、スバシッチら攻撃陣も守備陣もビッグクラブで活躍している選手が並び、個の力をはっきり感じた。そしてダリッチ監督も、彼ら質の高い選手たちを束ね、高い組織力をストロングポイントとするチームを作り上げた。