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イチローも「地味すぎて……」。
平野佳寿の“滋味”溢れる大活躍。
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byAFLO
posted2018/07/19 08:00
前半戦は46試合に登板して2勝1敗21ホールド、防御率は2.20。41回で37奪三振を記録している。
「目標は次の試合で抑えること」
平野が登板後によく繰り返す言葉がある。
「その日の結果に一喜一憂はしない。目標は次の試合で抑えること。それが大事」
一見味わいのない響きだが、この言葉にこそ平野の崩さない気組みが色濃くにじんでいる。
平野は鳥羽高校(京都)時代に痛めた腰が癒え、進学した京都産業大学で開花する。今も指揮を執る勝村法彦監督は入学時から期待をかけ、2年生でエースに抜擢。しかし、素質と体格に恵まれた平野には、足りないものがあった。
大学2年の時に築かれたメンタリティー。
その年の春のリーグ戦で打ち込まれた試合後。勝村監督は輪になった選手全員の中心に平野を据え、叱責した。
「去年からお前の練習の取り組みを見てきた。あんなんじゃ打たれるさ。そんなやつにマウンドを任せられるか。お前は控え選手の気持ちを考えたことはあるか」
勝村監督は登板機会を与えてきた1年の秋から、自覚を促す機会をずっとうかがっていたのだ。それ以来、平野は自分を見つめ直し、気持ちを入れ替えて野球に取り組み出す。大学ナンバーワン右腕と評されるようになったのも、勝村監督の人間形成に重きを置く指導があってのことだと平野は振り返る。
「あの日を境に、僕の気持ちは引き締まったんです。でも、プロのレベルでは気持ちだけでは結果を生めない。完封した次の試合で散々な内容になることもありましたから。だから一喜一憂はせず、次の登板へ変わらぬ気持ちで準備をするんです」
涵養してきた中継ぎ投手のメンタリティーの底には、あの日の苦い思いがしっかりと根を張っている。