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イチローも「地味すぎて……」。
平野佳寿の“滋味”溢れる大活躍。 

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木崎英夫

木崎英夫Hideo Kizaki

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posted2018/07/19 08:00

イチローも「地味すぎて……」。平野佳寿の“滋味”溢れる大活躍。<Number Web> photograph by AFLO

前半戦は46試合に登板して2勝1敗21ホールド、防御率は2.20。41回で37奪三振を記録している。

すっぽ抜けた2つの死球で気づいたこと。

「打者の弱点を熟知しているのは捕手。だからあえてサインに首を振ってまで投げようとは思わないんです。ならフォークでいいやってなっちゃう」

 ルーキーらしく、配球は捕手に委ねているのだ。

 一方で、並みいる強打者たちを前にして、ひと工夫しなければ生き残っていけない世界ということも実感していた。今季、平野は6月26日のマーリンズ戦と7月6日のパドレス戦で死球を与えているが、実は、すっぽ抜けた2球の裏にはこんな発見があった。

「内角へのフォークはファールになる」

 積極的に振ってくるアメリカの打者に、この球が有効と判断。その慧眼が2つの死球で曇るはずもなかった。記録を伸ばす日々の中で、平野は新たな軌道のフォークを模索していた。

「高低に加えて内外角に投げることで、(フォークが)他の球種の代わりになりつつある実感があります」

 切迫した場面での実践は、着実に結実へと向かっている。

ツーシームを一度も投げない理由。

 平野は140km台後半のストレートを軸にしている。マイルにすれば91、92程度。だが、7月頭に対戦したカージナルスの主砲オスーナは、「イメージするものよりはるかに重い」と評した。その球質を生かして投球の幅を広げるための速球系の取り組みがあっても何ら不思議ではない。

 しかし、平野の考えは違う。

「日本での12年間で僕は一度もツーシームを投げたことがないんです。覚えたら面白い球になるとは思うけど、それを投げることによってここまで磨いてきたフォーシームに影響が出て、今のボールが投げられなくなるのがいちばん怖い」

 習得か喪失か――。この迷いを斥けるように平野は言い放った。

「使うとなれば打者の左右関係なく、内外角にきっちりと投げられるほどにならないと使わない。そうできれば、12年以上投げてきたフォーシームは捨てて、ストレートのサインが出ても全部ツーシームの握りで投げます。それぐらいの踏ん切りをつけなければ僕は投げない」

 強靭な目的意識が染み込んだ平野の直球。それを「入魂の球」と呼ぶのは穿ち過ぎだろうか。

【次ページ】 「目標は次の試合で抑えること」

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