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エディーさんが沖縄で語ったこと。
「日本で評価すべきは若手の成長」
posted2018/07/11 11:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Jun Ikushima
レッスンが始まって15分が経過したところだった。「エディーさん」は沖縄の高校生を集めて、こう言い放った。
「始める前に、ラグビーはコミュニケーションのスポーツだと、言いましたよね? でも、まったく声が出ていません。ラグビーをやるのか、それともロッカーに戻って携帯をいじるのか、どちらを選ぶのか、ここで決めてください」
台風が沖縄に迫りつつあった6月30日、現イングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏は、スポーツくじ「toto・BIG」を運営する日本スポーツ振興センター(JSC)の招きで、沖縄の高校生50人を対象にラグビー教室を行った。
これまでにスポーツくじの収益は、日本のスポーツ振興のために約1629億円が助成金として使われ、そのうち地域スポーツの普及には約281.9億円が当てられており、その活動の一環としてエディーさんは沖縄にやってきた(金額は平成30年5月時点での実績。平成30年度は配分額を合算したもの)。
もともと、シャイな高校生が多いとは聞いていたが、初対面同士の選手も多いからか、レッスンが始まってからもコミュニケーションが少なかった。
ところがエディーさんが「選択」を迫った次のプレーからは、驚くほど声が出るようになり、一気にレッスンは活気づいた。
「一瞬にして変わりましたね。ちょっとしたきっかけで若者たちは変わるのです。120分は短いかもしれませんが、フォーカスすることを絞れば、驚くほど効果が上がります。
沖縄はラグビーが盛んな地域ではありませんが、素晴らしいプレーヤーがいました。彼は進学先を決めているようですが、日本協会が発掘を怠らなければ、素質のある選手はまだ眠っていますよ」
エディーさんは今イングランドの代表監督。
実はレッスンの1週間前まで、エディーさんはイングランド代表を率いて南アフリカと戦っていた。3戦を戦い、最終戦に勝って1勝2敗。シックスネーションズからの連敗をようやく止めたところだった。
昨年11月のテストマッチ期間を終えた段階では北半球ではナンバーワンの実力を誇り、2019年のワールドカップ(W杯)ではオールブラックスと覇権を争うのではないか、と見られていたイングランドの失速に、自国メディアはやきもきし始めている。