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「コメディ」のち「最高のセーブ」。
川島永嗣への批判は適切ではない!
text by
岩崎龍一Ryuichi Iwasaki
photograph byGetty Images
posted2018/07/10 10:30
川島永嗣の「止めてくれそう」な雰囲気は、率直に言って他のGKにはないものだ。それはオーラとも呼べる存在感である。
コロンビア戦、セネガル戦についても……。
今回のW杯ではネガティブな意味で、川島は注目を浴びてしまった。コロンビア戦のFKからの失点、さらにセネガル戦の先制ゴールを許した場面について、川島のプレーに多くの批判が寄せられたと聞く。
確かにシュートに対する対応のまずさはあった。しかし、レベルで考えればポルトガル戦でクリスティアーノ・ロナウドのシュートを後逸したダビド・デヘアや、クロアチア戦で相手にプレゼントボールを送ったカバジェロのミスほどではないだろう。
バイオリズムというものがあるのなら、今大会に至る過程で川島のそれは、決してよくなかった。横浜でのガーナとの壮行試合。大会直前の欧州合宿中のスイス戦。誰の目にも守備ラインとの連係ミスが見え、判断に迷いがあるのは明らかだった。そのことについて川島は、こう話している。
「(監督交代で)新しいチームになったガーナ戦から、自分のなかで入りがよくなかった。うまくそれを断ち切れないという部分があった」
気持ちの整理がつかないまま、川島は自身3度目のW杯に臨むことになったようだ。
コロンビア戦で39分にキンテーロに許したFKからの失点。「壁の下を越えた時点でかなり難しいなと思った」という発言は、周辺の話を聞くと、どうもその部分だけを切り取られた感もする。これによって受けた批判も大きくなった。
しかし、昌子源の話では壁に入った選手は、ジャンプしないで最後までボールを見て、壁の下を空けない約束になっていたらしい。川島からすれば、本来はボールが出てくるはずのない場所から出てきた。それが反応の遅れを招いたともいえる。
マネへのパンチングは何のミスだったか。
悪い流れはセネガル戦にも続く。前半立ち上がり早々の11分に、サディオ・マネに献上した先制点だ。
あの場面では川島のパンチミスがクローズアップされた。しかし、前段階に原口元気のクリアミスがあった。CKに逃れていれば何の問題もなかったはずだ。ユスフ・サバリの放ったミドルシュートを弾き損ねた川島のボールが、そのままマネに当たってゴールに転がり込んだのは、ミスが2つ重なったからだ。
「キャッチすればなんの問題もなかった」
そう批判する人はいるだろう。個人的には、必ずしもパンチの判断が間違いだとは思わない。あの場面ではマネが詰めていた。川島の視界にその影が大きく映っていたことを考えると、キャッチミスをフォローされる可能性を捨て切れなかったはずだ。
本人も「自分のミスで失点してしまった」と認めているように、原因は明らかだった。パンチする拳の、ボールに接する面の角度を誤っただけだ。