セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
VAR判定でイタリア審判団に脚光が。
仕切るのはレフェリー界のビッグ3。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/07/04 11:00
試合が止まり、映像が分割されて分析される。今回のW杯でVARはサッカーにお馴染みのものとなりつつある。
セリエAは誤審率、警告数の減少が顕著。
それによれば、セリエAでの誤審率はVAR未採用時の5.78%から0.89%へと激減。警告数の減少も顕著で、抗議に出されたカードは17.5%、シミュレーション行為に対する警告は35%の大幅減となった。
開幕当初、平均1分22秒かかっていた映像確認の所要時間も、全日程を消化した後には平均31秒5と大幅なスピードアップを果たした。
VARによるメリットは、採用前のあらゆる楽観的予測を上回り、導入に抵抗した層を完全に黙らせるほど圧倒的だったのである。
前回のブラジルW杯で決勝戦の主審を務めたニコラ・リッツォーリは、現在セリエA審判任命委員長の重職に就いている。実質2年間の使用実績と運用データを蓄積したことで、VAR運用に関してはどこよりも一日の長があると自負する。
「VARのシステムは複雑で、実際にうまく運用させるには技術的にも体力的にも準備や慣れに時間を要する。イタリアほど習熟度や運用面で高いレベルにあるレフェリーを抱える国はないはずだ」
名審判ですらW杯決勝でミスジャッジ。
現在、世界のレフェリー界は“イタリア系ビッグ3”によって仕切られている。
FIFAの審判部会委員長はイタリア系スイス人であるマッシモ・ブサッカで、同VARプロジェクト・リーダーにはトリノ出身のロベルト・ロセッティが就いている。
3人目である審判委員長コッリーナは、ロシア大会の開幕前に語気を強めて言っていた。
「我々が絶対に排除すべきは、試合の結果が誤審によって左右されることだ。名審といわれたハワード・ウェブですら2010年の南アフリカ大会の決勝戦(※スペイン対オランダ)で、退場に相当したデヨングのファウルを見落とした。2度とあってはならない」
国際審判たちには“VARの上手な使い方”という新たなスキル向上の項目が増えたということだ。