セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
VAR判定でイタリア審判団に脚光が。
仕切るのはレフェリー界のビッグ3。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/07/04 11:00
試合が止まり、映像が分割されて分析される。今回のW杯でVARはサッカーにお馴染みのものとなりつつある。
“VARをどう使いこなすか”に差が。
VARの運用には慣れや経験が重要だ。
昨年のコンフェデ杯やクラブW杯で試験採用された後、ロシア大会でのVAR本採用はインファンティーノFIFA会長の肝煎りだった。
ただし、世界中の大陸別連盟から派遣されてきた審判たちのほとんどが、プレッシャーのかかる大舞台でVARを使用した経験がないまま大会に臨んでいることには変わりない。
もちろんFIFAは大会前に審判団に事前講習を行い、各試合前にも対戦2チームの特徴やクセ、戦術傾向などの詳細なレポートを担当主審にレクチャーしている。
ただ“VARをどう使いこなすか”という新たな審判技術については、すでに国内で場数を踏んだレフェリーの方が安定して試合運営をこなせる確率は高いだろう。
イタリアやドイツ、ポルトガルのように、すでに国内リーグへVARが本格導入され、週末ごとに行われる膨大な数の試合から種々多様な使用例のデータを蓄積し、経験を重ねている国とそうでない国のVAR運用に対する熟練度の差は非常に大きい。
イタリアは出場を逃すも審判が存在感。
VAR導入の流れは欧州圏やMLSで広がっているが、中南米やアフリカでの導入例は皆無であり、広大なアジア圏でも未だ少数の国に留まっていることは覚えておきたい。
ロシアとサウジアラビアが対戦した今大会開幕戦で笛を吹いたのはアルゼンチン人のピタナ主審だったが、4人で構成されるVARチームにはイタリア派遣の2人が含まれていた。
大会2日目の大一番「スペイン対ポルトガル(3-3)」で、イタリアの第一人者ロッキが主審を任されたのも決して偶然ではない。同主審は「日本対セネガル(2-2)」でも極めて冷静なジャッジを見せた。
代表チームは本大会出場を逃したが、イタリアの審判団は“VAR先進国”としての存在感を十分に発揮しているといえる。
他国に先駆け、2016-17年シーズンにブラインドテストを開始したセリエAは、昨季からVARを年間400試合近くある国内リーグ戦とカップ戦に全面投入。シーズン終了後、イタリア・サッカー連盟と審判協会はデータを公表した。