炎の一筆入魂BACK NUMBER
菊池涼介、進化は守備だけじゃない。
「トリプルスリーやるなら、キク」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/05/27 08:00
人間離れした身体能力の守備は健在。今季の菊池涼介は打撃でもその能力をいかんなく発揮している。
攻撃的な守備でも失策はしない。
守備範囲の広さも衰え知らずで健在だ。広島投手陣の制球難から四球を連発する場面が続いたシーズン序盤も、根気強く、1球1球ポジションや構えの体勢、重心などを変えてきた。二塁ベース付近から一二塁間深くまで、ヒットゾーンもことごとくアウトにすり替えている。
本能的な感性もあるが、配球や相手打者のスイング軌道、過去の傾向から打球の方向を導き出す。
「もちろん全部当たるわけじゃないけど、ズバズバ当たるときもある。もちろん外れるときもある。それでもやらないと」
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多くのファンを魅了するビッグプレーの陰には、緻密なデータがある。攻撃的な守備で、今季目標とする「失策ゼロ」を継続する。
驚異的な守備範囲だけでなく、バランス能力に優れ、強肩や冷静な判断力を兼ね備えている。
ここまで広島はリーグトップの併殺を記録する。それだけの併殺を積み重ねたのは、二遊間のコンビネーションとともに、二塁手菊池の肩力がある。二塁手の捕殺からの送球時の動きは、遊撃手よりも限られる。その中で菊池は見た目には分からないほどの細かな重心移動で力強い送球を可能にしている。
数年前の首脳陣は二塁から遊撃へのコンバートも視野に入れていたものの、肩の強さによる内野安打減と併殺増によって、コンバート案は封印されたのもうなずける。
判断力で奪った鮮やかなアウト。
5月19日ヤクルト戦は強肩ではなく、判断力が相手の反撃意欲をそいだ。
3点リードの8回。先頭のバレンティンの右中間への当たりで二塁を狙った場面だ。捕球したセンター野間峻祥との中継に入った菊池は「力強さ」ではなく、「素早さ」を優先。野間からの送球の力を受けながら体を反転させて、体を倒しながら二塁ベースカバーに入った田中広輔へ送り反撃の芽を摘んだ。
昨季まで広島で指導していた河田雄祐外野守備走塁コーチは「ココ(バレンティン)の走路もまずかったけど、あれはキクのうまさにやられた」と認めた。