炎の一筆入魂BACK NUMBER
菊池涼介、進化は守備だけじゃない。
「トリプルスリーやるなら、キク」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/05/27 08:00
人間離れした身体能力の守備は健在。今季の菊池涼介は打撃でもその能力をいかんなく発揮している。
スラッガー顔負けの本塁打を狙える。
一方、この試合で河田コーチは、3回1死一塁から青木宣親の左中間への当たりで、右腕をグルグル回し、一塁走者山田哲人を本塁に生還させた。
三塁コーチャーズボックスから打球の強弱や外野手の捕球体勢、中継の位置などを見極めて、瞬時に「ゴー」か「ストップ」かを決める。ヤクルトでも広島で指導してきたような積極走塁を浸透させる名コーチに「右中間の当たりであれば?」と問うと、「中継がキクだったら止めていたかもね」と答えた。
優れたバランス感覚によって生み出されるパワーは打力でも発揮される。5月11日阪神戦は、「あれは完璧だった」という長距離打者顔負けの豪快弾を左翼席に突き刺した。
丸も「トリプルスリーやるなら、キク」
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'14年オフ、丸とのやりとりの際に発せられた言葉が思い出される。同年、打率3割1分、19本塁打、26盗塁を記録した丸にトリプルスリーの可能性を問うと、「無理でしょう」と否定し、こう続けた。「うちでやるなら、キクでしょう」。同年、打率3割2分5厘、11本塁打、23盗塁の菊池に、その可能性を感じていた。
171センチ、72キロの体は決して大きくはない。プロ野球界では、年数を重ねるごとに筋肉量が増える選手もいる。その中で入団から7年目、菊池の肉体は劇的に変わってはいない。シーズンオフになるとウエートトレーニングを行う選手が多くいる中、菊池は柔らかな筋肉の維持と瞬発力、スピードをバランスよく強化してきたことで、20代後半となっても進化を感じさせる。
主力不在の間、菊池の貢献度は数字だけでは測れないものがある。5月11日に新井が一軍に合流し、25日には丸が復帰した。きっと両肩に乗った重圧や責任は軽減されるだろう。役者が揃った、ここからの戦いこそ、菊池が見せるプレーに注目したい。