草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
中日のカリビアンはなぜ活躍できる。
チーム内の国境を越えたファミリア。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2018/05/24 08:00
今季から加入したアルモンテ(右)は5月20日現在、打率3割5分2厘でリーグ2位。3年目のビシエド(左)とともに打線を引っ張っている。
ひげを蓄え、首位打者争うアルモンテ。
中日を支えているのはこの3人だけではない。
ソイロ・アルモンテ。ご存じひげ男は生まれも育ちもドミニカ共和国だ。自慢のひげは「1日に3回シャンプー&トリートメントする」という衝撃の告白も。開幕から左右両打席ともに好調を維持し、打率.350以上の高水準で首位打者を争っている。
ライデル・マルティネス。キューバ政府からの正式ルートで派遣された21歳の右投手。昨季は育成選手契約だったが、著しい成長を見せ4月に支配下登録を勝ち取った。変化球の精度こそまだ低いが、150キロのパワーピッチは原石の魅力を感じさせる。5月15日の広島戦(ナゴヤドーム)では見事に来日初勝利を挙げた。
アリエル・マルティネス。同じくキューバ正式ルートで入団した21歳の育成選手。外国人の捕手という難しい立場だが、まずは二軍で経験値を高めている。
実は最も期待された新外国人としてメジャー通算51勝右腕のディロン・ジーがいた。アメリカ人で母国語を英語とする唯一の存在だったが、血行障害を発症し、帰国、手術。今季中の復帰は絶望視されている。
リナレスというリスペクトすべき伝説。
つまり、ジーを除いて2人の亡命キューバ人と2人のキューバ人、そしてドミニカ共和国からが2人在籍する。国籍が違うのはともかく「亡命」という政治的な要素がからむとビミョーな空気が流れそうなものだが、事実はその逆だ。
たとえばガルシアの家族は今なおキューバ在住だが、彼に悲痛さはない。たとえば彼らは球団が代々の外国人に用意してきたマンションで暮らしているが、「あいつとは違うマンションにしてくれ」なんて言うこともないし、思ってもいないはずだ。
たとえばあのキューバ伝説の主砲、オマール・リナレスは実質的な外国人専用コーチ(肩書きは通訳だが、日本語は話せない)として在籍しているが、亡命したビシエドには冷たいなんてことはない。むしろ彼らはリナレスをリスペクトし、リナレスは彼らを尊重してアドバイスを送っている。