草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
中日のカリビアンはなぜ活躍できる。
チーム内の国境を越えたファミリア。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2018/05/24 08:00
今季から加入したアルモンテ(右)は5月20日現在、打率3割5分2厘でリーグ2位。3年目のビシエド(左)とともに打線を引っ張っている。
「亡命したからどうこうはない」
極めつけはカルロス・ミゲル・ペレイラ。この名前をほとんどの人は知らないだろうが、駐日キューバ大使だ。リナレスも元国会議員だが、こちらは現役の外交官。言うまでもなく政府の意向や政策を忠実に実行する要職だ。
そんなエリートが、5月12日の巨人戦(東京ドーム)を観戦し、特大の本塁打を放ったビシエドを称え、がっちり握手を交わしていた。雪解けムードが高まってきたとはいえ、米国とキューバにはにらみ合ってきた歴史がある。いっしょに扱っていいのかはビミョーだが、同じ共産国でも北のあのお国(そもそも野球は普及していませんが……)ではあり得ない光景だろう。
「まあ、難しいところではありますが、亡命したからどうこうってことはないですね」
明るく話してくれたのは桂川昇通訳だ。強豪の県岐阜商で白球を追った元球児は、バックパック1つでニカラグアでの青年海外協力隊に身を投じた。そこでスペイン語を習得し、あのオレステス・キンデランが加入したシダックスなどで通訳を始めた。
中日入団は2003年。リナレスをサポートしたのも桂川氏だ。森繁和監督が自ら中米に赴き、ときには危険な目にも遭いつつスカウトしてきたことは球界では有名だ。
森監督が試合4時間前に見ていること。
そんな交渉に立ち会ったこともある桂川氏は、成功の秘密の一端をこう説明している。
「森さんは試合があればその4時間前には球場にいるんです。どこの国のスカウトもいません。誰も見ていないところで、その候補選手がどんなことをしているか。そこに人間性や性格を見ているんだと思います」
そしてもう1人忘れてはならないのが、ブルペン捕手兼通訳のフランシス・ルイス氏だ。広島のドミニカアカデミー出身で、20歳で来日してから22年。今や「日本人より敬語を操れるドミニカ人」としてあらゆる人間から愛されている。
通訳としては投手担当。ルイス氏いわく「キューバ人はまじめ。日本に来た外国人は時間のルーズさが問題になるけど、彼らに手を焼くことはないです。何かあれば話し合うし、僕は弟みたいに思っているから」