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「ああ、ベースボールしてるなぁ」
西武・木村文紀の野手転向6年目。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/05/17 10:30
野手転向6年目の木村。投手の経験が長い分、ピッチャーの心理も手に取るように分かる。
出てない時は他の選手を全力で応援。
「今は、与えられたチャンスを逃すことなく、しっかりものにしたいと思って毎日練習しています。連勝中は、試合に出る選手全員に打ってほしいし、全員に活躍してほしいと言う気持ちでベンチにいました。勝っている場面では、僕は守備固めで出させてもらいましたけど、自分が出ていないときは他の選手を全力で応援します。
とにかく優勝したいので、その姿勢は変えません。もちろん、試合に出られない悔しさはありますよ。でも、そこで僕1人が違う方向を見てしまうのは、チームに悪い影響を与えます。スタメンじゃなくても、あとから行っても、守備固めでも、代走でも、自分の仕事がある。与えられた仕事をまずはしっかりやろうと思っています」
『優勝をしたい』という部分で語気を強めた。
「どんな打球でも『H』がつけば」
最も期待されているのは、その脚力だろう。盗塁だけではなく、シングルヒットだと思われる当たりで二塁をねらう。捕手が弾いたボールを見て、果敢に次の塁をねらう。そんな貪欲な姿勢が木村の大きな武器だ。
「シングルヒットで出ても、盗塁で得点圏に行けるのは大きいし、相手からしてもピンチを迎えて気分は嫌だと思う。相手の守備にプレッシャーをかける走塁は僕だけではなくてみんなで目指している野球。そういう場面が増えるのは、いい傾向だと思います。
もちろんベストは、鋭い打球でヒットを打つこと。でも、どんな打球でも『H』がつけばうれしいですね。ボテボテの当たりで打球を見ずに無我夢中で走って、何が起きたのかわからないという内野安打もありました」
これこそが、木村が野手転向後、目を輝かせて語っていた『ベースボールの醍醐味』ではないか。
「今後、また連敗することもあるかもしれない。苦しい場面が来るかもしれません。そのときにチームが暗くならないように、負けていても連勝中のいいムードを維持できれば、結果はついてくると思います」
開幕時のライオンズ打線の破壊力は、そうそう維持できるものではない。対戦が増えるほど、相手バッテリーの警戒も強くなる。そんなときこそチームに必要なのは、貪欲な走塁や、堅実な守備であるはずだ。
野球の醍醐味を体現する、木村の存在感が増すことに期待したい。