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「ああ、ベースボールしてるなぁ」
西武・木村文紀の野手転向6年目。
posted2018/05/17 10:30
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
強く印象に残っている言葉がある。
2012年、木村文紀が投手から野手へと転向した直後の秋季練習で、木村が練習後に語った言葉だ。
「バットを振って、守って、走って……。ピッチャーのときには避けていたヘッドスライディングを始めてしたときには“ああ、ベースボールをしているなぁ”って思いましたね」
6年前の言葉を、現在、木村は高いレベルで実現しつつある。ここまで25試合の出場ながら2割9分7厘の打率を残し、得点圏打率は5割を越える(5月15日現在)。バッティングはもちろん、守備と走塁でもチームの勝利に貢献してきた。特に守備では、その強肩がチームのピンチを救う場面も多い。
強肩と足を生かして打撃にもつなげる。
5月13日の千葉ロッテマリーンズ戦では2安打2打点と活躍し、チームの連敗を4で止めた。今シーズン2度目のお立ち台に上ったが、辻発彦監督が高く評価したのはバッティングより守備だった。
「ランナー二、三塁の場面でホームインを阻止した木村の守備は大きかった」
強肩を生かし、犠牲フライかと思われる打球をホームへダイレクト送球。ランナーを三塁に釘づけにした。
「守備にはスランプはないと思います。それに堅実な守備を維持しておかないと、それが、自分が期待されている部分なので……」
“脚にスランプはない”とは野球でよく語られる言葉だが、木村が心掛けているのは常に安定した守備力を見せることだと言う。
「脚はケガとか、どこか張っていることもあるので、自分ではスランプはあると思っています。実は今日も朝、起きたときに脚が重かったんです。それで、練習のときにダッシュを多めにしました。ダッシュを繰り返せば体にキレが出るし、そのキレがバッティングにもつながると思います」
野手転向6年目、こうして自分の体を日々、確認し、自分なりの調整もできるようになった。