卓球PRESSBACK NUMBER
世界卓球決勝に見た「中国の壁」。
日本女子はいつ越えられるのか?
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph byAFLO
posted2018/05/14 08:00
打倒中国こそ果たせなかったものの、今回の世界卓球でも強さを見せた日本。平野美宇らの成長はこれからも続く。
回転、コースが多彩なサーブで先手。
よく中国人選手は「1本多く返してくる」といわれるが、優れた攻撃力やディフェンス力だけでなく、こうしたラリー中の駆け引きに非常に長けているのだ。
平野も途中からは1本で決めようとせず、打球に緩急をつけて相手のタイミングをずらし、ミスを誘ってポイントを奪った。だが、初めから相手をいなすような余裕のあるプレーと目の覚めるような強打を織り交ぜてくる中国の成熟した戦術に、日本との違いを見せつけられた。
サーブとレシーブにも中国の強さが見えた。中でも3番手で石川佳純(全農)と対戦した朱雨玲のサーブは秀逸だった。派手なラリーに比べ、サーブ、レシーブをめぐる攻防は一見わかりにくいが、彼女のサーブは明らかにバリエーションに富んでいた。
特に前半は意表を突くタイミングでのロングサーブや、角度をつけてサイドを切るようなフォア前サーブを多用し、石川を翻弄した。そして、石川が徐々に慣れてきた第2ゲームからは巻き込み系のサーブにチェンジ。微妙に回転を変えながら石川のレシーブを封じた。
聞くところによれば朱雨玲は世界卓球に向けて、男子選手に教えを請うなどして新しいサーブを用意してきたという。それを要所要所で使ったため、石川は最後までサーブとレシーブでいい形を作ることができなかった。
サーブとレシーブで対抗できた伊藤。
「第一の攻撃」ともいわれるサーブで先手を取れれば、試合を有利に進められることは言うまでもない。ちなみに朱雨玲のサーブ時のポイント獲得率は第1ゲームで100パーセントに達していた。
一方、1番手の伊藤とリュウ・シウェンとの試合もサーブとレシーブが鍵を握る一戦だった。伊藤は劉のサーブにうまい対応を見せる。強い横回転をかける伊藤のチキータレシーブや逆チキータレシーブを警戒したリュウ・シウェンが、ネット際に落とすフォア前サーブと伊藤のバック側を深く突くロングサーブを繰り出すと、伊藤は特にロングサーブに対して素早く回り込みフォアハンドレシーブをお見舞い。
さらに自分のサーブ時にはリュウ・シウェンのバックミドルを突くロングサーブで、ミスの少ないリュウ・シウェンから何本もオーバーミスを誘った。
今大会の伊藤は、日本人選手相手に37戦負けなしだったリュウ・シウェンから勝利をもぎ取った。この快挙の大きな要因は、サーブとレシーブでしっかり対抗できたことにあるだろう。