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“異例”のタイミングでプロ宣言。
平野美宇、知られざる半年間の葛藤。

posted2018/04/02 17:30

 
“異例”のタイミングでプロ宣言。平野美宇、知られざる半年間の葛藤。<Number Web> photograph by Kyodo News

日本卓球協会の星野一朗専務理事からエリートアカデミーの修了証を受け取る平野美宇。

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高樹ミナ

高樹ミナMina Takagi

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Kyodo News

「私はJOCエリートアカデミーを卒業して、プロ卓球選手として活動していくことを決断したので報告をさせていただきました」

 東京都北区にある味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で3月30日に開かれた記者会見の冒頭、平野美宇(元JOCエリートアカデミー/大原学園)はこう切り出した。

 会見の案内が報道各社に届いたのはわずか2日前の28日。

 そこには平野が在籍するJOCエリートアカデミーを1年前倒しで修了し、プロ活動を開始する旨が明記されていた。

 平野が同アカデミーを辞めてプロに転向するという話はこれまで噂にすらなったことがなかった。

 まさに青天の霹靂。

 同アカデミーによれば、高校3年時の修了を待たずに施設を去る選手の例は過去にもあったというが、大々的に記者会見を開くのは今回が初めてだという。それだけ平野の実績、存在感は大きく、JOCエリートアカデミーとしてはきちんとけじめをつけておく必要があったということになる。

環境を変えようと思い始めた昨季後半。

 JOCエリートアカデミーは、日本のスポーツを管轄する文部科学省の予算が投じられており、運営資金にはスポーツ振興くじ(toto)の収益金も使われている。在籍する選手=アカデミー生の寮費や食費はJOCが、競技費用や施設使用料は各競技団体が負担するなど、いわば国の全面的なサポートを受けている施設である。

 そこに在籍する平野が中途で辞めるというのは異例の事態だ。なぜ平野はそうした勇気ある決断を、しかもこのタイミングで下したのか?

 記者会見でも記者たちの質問はほぼその一点に集中した。

 平野の回答はこうだ。

「JOCエリートアカデミーでは、とても良い環境で卓球をやらせてもらって感謝している。

 ただ、東京五輪出場と金メダル獲得に向けどうしたらいいか考えた時に、もっと自分で責任を持って練習や試合に臨みたいと思うようになった。その方が自分を追い込めるし、モチベーションも上がると感じた」

【次ページ】 生まれて初めて「卓球をやりたくない」と。

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