濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“世界一の女”浜崎朱加が直面した、
“ジャパン”のRIZINで輝く難しさ。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2018/05/13 09:00
関節技でもうあと一息で勝利……というところまで追い込んだ浜崎だったが、ガルシアの粘りも相当なものだった。
「圧勝」を求められた試合だったが……。
しかし、昨年の女子GP優勝者・浅倉カンナに勝ったこともあるガルシアは簡単な相手ではなかった。常に主導権を握っていたのは浜崎だが、ガルシアも隙あらば反撃してくる。投げた瞬間に体勢を切り返され、バックを奪われる場面もあった。
判定3-0の勝利にも、浜崎に笑顔はなかった。「一本取って勝つつもりでいたので」。それも含めて実力だとしながら、動きが固かったことも認めた。
インタビュースペースでの共同会見を終えた浜崎に単独インタビューを申し出ると、快諾してくれた。そこであらためて語ったのは「RIZINの初戦で存在感を残したい」、「世界を相手にトップを取った力を見せたい」という思いが空回りしたということだ。
「言い訳になっちゃうから、あんまり言いたくはないですけど。やっぱり浮足立ってたんですかねぇ」
日本での試合自体が、2014年大晦日以来、約3年半ぶりのことだった。インヴィクタFCでの彼女の立ち位置は、結果としてベルトを巻いたにせよ“MMA大国アメリカに挑む極東からのチャレンジャー”である。勝利の喜びも敗北の悔しさも、すべてが日本の女子ファイターとして“歴史に刻む一歩”だったと言っていい。
アメリカと日本では立ち位置が変わった。
しかしRIZINでは主催者から圧勝を求められる。試合に臨む心の持ちようも試合の見られ方も、まるっきり変わるわけだ。
相手のパンチをもらう場面もあったが、それは浜崎自身が打撃力向上を課題としており、スタンドに時間を費やしたからでもある。つまり浜崎は結果と内容と課題の克服、それらをすべて達成しようとしていたのだ、それも初経験の大舞台で。
付け加えるなら、知人や関係者に頼まれたチケットを手配するのも久しぶりだった。アウェーのアメリカでは必要がなかったのだ。
「そういえばそうですね。いろいろやることがあって、試合まであっという間に時間が過ぎた気がします」