ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
日本ハムが悩むファンサービスの形。
選手も感情を持つ1人の人間である。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/04/27 08:00
ドラフト1位で入団した清宮幸太郎。自主トレから多くのファンが鎌ヶ谷球場へ詰めかけた。
善意のファンは多いが、中には……。
ファイターズの周りは温かい、善意あるファンの方々であふれていることは、強調しておきたい。その前提で、また球団の広報として胸を痛める状況に直面することがある。
きっと、お目当ての選手からではなかったのだろう。ある選手が、サインをしたためた色紙をブーメランのように投げて、遊んでいた場面を目にしたことがある。最後には、その色紙はボロボロになっていた。
また別の時には、雨が降りしきる路上に放置してあったこともある。
悲しい気持ちになる。
広報にも、感情がある。気持ちを込めて対応したであろう選手には、その事実を伝えることは控えた。言えない。サインをもらい、握手をしたりすると、感激をして涙ぐむ方々も目にしたことがある。だが他方、レアケースではあるが、ガッカリする現実もあるのである。
変装してまで何度も何度もサインをもらう人。
ニーズが高い選手には、ファンの方々に列を作っていただき「1人1回、1個」でお願いをすることがある。
大多数の人たちには、そのお願いを順守してもらえるが、そうでないこともある。列にもう1度、並ぶ方がいる。きっと違う人物を装っているのだろう。最初に並んだ時には被っていなかった帽子をかぶり、眼鏡をかけ、マスクをしたりして「変装」をしてサインを2度、3度と、もらっていた。
某選手は、あとで耳打ちしてくれた。「あの人、2回サインもらいました。昨日も同じようにいました」と。その某選手は同一人物だと認識していながらも、何度も、何度もサインをしたのだ。その方も、きっと純粋なファン……だと、信じているのだろう。気分を害してはいけないと、その行為を黙認しているのである。