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登録抹消・SB千賀滉大への提言。
“横滑りのスライダー”一時中止を。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2018/04/11 10:30
今季は2試合に先発し10回2/3を投げ0勝1敗、防御率5.06と、不本意な成績が残っている。
「良さである中指を殺してしまうのでは」
今年、千賀はこれまでとは違う新しいスライダーを投げ始めた。昨年までは縦に変化をしていたが、千賀といえば『お化けフォーク』が代名詞だ。投球の幅を広げるためには横滑りをするスライダーは魅力十分に映ったのだろう。
キャンプのブルペンでも熱心に投げ込み、オープン戦では意図的にかなり多投していた。
「それが人差し指を呼び起こし、彼の良さである中指を殺してしまうのでは」
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随分前から心配の声を上げていたのは「鴻江スポーツアカデミー」(以下KSA)代表の鴻江寿治氏だ。千賀はプロ1年目のオフから、毎年1月は鴻江氏の主宰する自主トレに参加しており、投球フォームの基礎をこの場所で作り上げてきた。
人差し指に、中指?
一体、どういうことか。
変えたストレートの握り。
千賀は'16年のシーズンから、ストレートの握りを現在のものに変えている。通常の握りよりも少し左にズラす。KSA自主トレでは「シュート握り」と呼んでいた。
ボールの円の頂上に置くのは中指。人差し指は添えるだけのイメージで、中指で強く弾く。誰もがそうしていいわけではない。鴻江氏の提唱する「反り腰型」(右骨盤が開き、左骨盤が被っている)の“体が回りにくい”タイプが合うとしており、たとえば同じ自主トレの参加者でも「猫背型」(右骨盤が被り、左骨盤が開いている)のホークスの石川柊太はこれを取り入れていない。
人間は中指が一番長い。その数センチの“指のかかり”の違いが、ボールの回転数を押し上げ、より強い切れ味を生む。また、鴻江氏はもう1つの利点を説明する。
「中指に軸を置く。そうやって投げることで、身体の近くを右腕が通るようになると考えています。腕が遠回りすれば肩や肘の負担は増すわけですから、より故障をしにくい投球フォームになるのです」