サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
酒井高徳はこの現実から逃げない。
「僕はできるんだというのを」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2018/03/29 07:00
クリアがあわやオウンゴールという場面もあったウクライナ戦。酒井高徳のアピールへの厳しい戦いは続く。
ひとりだけ違う絵を描いていた感覚。
成長のきっかけは、チャレンジしてこそつかめるもの。けれど残留争いのなかでは、リスクを承知でトライすることはできない。選手としての伸びしろが小さくなっているような、そんな思いを酒井が抱いても不思議ではないだろう。
「下位にいるチームでは、どうしても自分のやりたいサッカーができないところがある。チームのテーマに沿ったプレーをしなければならないし、周りにボールを受けたくない選手がいれば、繋ぎたくても繋げない……」
特に今季のハンブルガーSVには、勝利の兆しがまったくない。監督交代を繰り返しても負のスパイラルから抜け出せない。それは酒井自身にも言えるのかもしれない。磨かれない感覚が、代表のユニフォームを着てプレーすることで露わになった。
ウクライナ戦。攻撃面では、周囲とイメージを共有できていないと実感するシーンが何度もあった。
「すべてのアクションにおいて、今日はひとりだけ違う絵を描いちゃっているなという感覚が強かった。パスのタイミングが違ったり、違う場所へ動いていたり、今思えばクロスを入れるべきだったシーンもある。
そういうズレが技術的なものなのか、コミュニケーションで解決できることなのか。映像を見て、確認し、改善できるところは改善したい」
戦術以前の1対1は単純な力不足。
そして守備においても、1対1でかわされるシーンが多発していた。
「自分も今日は、何度も何度も剥がされて……というところがあった。そこで味方からのカバーなんて求めてない。単純に自分が力不足だってあらためて感じている。そこからは逃げたくはない。
そして、日本代表の選手もそこは逃げちゃダメだと思う。他の選手も僕と同様に、『今日は剥がされた、ボールを取れなかった』と感じているはず。そこは、戦術以前のこと。個人がそこでしっかりボールを取り切ることが大前提だから。
プレッシャーをかけるサッカーをしても、取り切れなかったら戦術にならない。自分ももっともっとやらなくちゃなって、あらためて思った、たとえ海外でやっていたとしても」