マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
センバツの東海大相模に漂う予感。
エース・斎藤礼二はやはり格が違う。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/03/26 18:00
センバツ優勝候補の一角、東海大相模。近年は複数の有力投手を育てるイメージもあるが、エース齋藤は頭ひとつ抜けた存在だ。
番狂わせは左の緩急投手が怖い。
もともと東海大相模打線が持つ、勢いに乗った時の、たたみかけるような連打と時間をかけずにビッグイニングを作れる「ファースト・ストライク痛打」の迫力は全国レベルで間違いない。
しかしその打線が、この日は山梨学院の2人のサウスポーに苦しんだ。
すごいボールがあるわけじゃない。その代わり、サウスポーの特性であるクロスファイアーの角度が鋭く、2種類の変化球のコントロールを持つ2人の左腕に最後までタイミングが合わず、無得点に終わってしまった。
これが、高校野球の“春”である。
番狂わせがあるとすれば、緩急勝負のサウスポーのピッチングがハマった時だ。センバツ本番でも、この“方程式”はそのままあてはまる。
たとえば慶應高・生井惇己、たとえば乙訓高・富山太樹、たとえば近江高・林優樹……いずれも要注意の“伏兵”であろう。
森下、渡辺、小松と打線も強烈。
すでに、高校通算46弾のスラッガーとして前評判の高い森下翔太中堅手(3年・180cm77kg・右投右打)も、5打席の最後までタイミングを合わせることができずに終わったが、それでも、体勢を崩された空振りでも、そのスイングスピードはすばらしい。
今は三振に切ってとったが、次はやられるかもしれない。投手の記憶の中に、そんなうすら寒い不安を刻みつけられるだけの“猛烈”なスイングだ。
「大田泰示(現・日本ハム)は左中間に見えなくなるほど飛ばしましたけど、森下は同じ打球を右中間に持っていきますから」
門馬敬治監督が教えてくれた驚きのバッティングセンスはセンバツ本番のお楽しみとなったが、誰もが打ちあぐんだ山梨学院の左腕の緩急をただ1人自分のポイントで捉え、振り出し鋭くコンパクトなスイングで右中間フェンス目がけて消えるように飛んでいった打球を放った渡辺健士郎一塁手(3年・182cm82kg・右投左打)に、小柄でも意外なほどの打球のスピードと球際に強いフィールディングに驚かされる小松勇輝遊撃手(3年・172cm70kg・右投左打)。
センバツ本番の甲子園で、実戦を重ねながら強くなっていきそうな予感がするこの春の東海大相模である。