マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
センバツの東海大相模に漂う予感。
エース・斎藤礼二はやはり格が違う。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/03/26 18:00
センバツ優勝候補の一角、東海大相模。近年は複数の有力投手を育てるイメージもあるが、エース齋藤は頭ひとつ抜けた存在だ。
半年ぶりの実戦で、打者を呑んでいる。
「プレー!」の声がかかる前から、試合の流れを作ってしまって、「さあどーぞ」と打者を打席に呼び込んでいるから、打者は「失礼します……」と、ちょっと引いた感じでバッターボックスに入る。
初球を投じる前から、打者を呑んでしまっている。
そんなエースのテンポを代わりばなから発散して、東海大相模・斎藤礼二の復調はすこぶる順調のようだ。
昨秋9月の神奈川県大会以来、ほぼ半年ぶりのマウンド・カムバックなのだろうから、もっとソワソワ、キョロキョロ、落ち着きがなくてもおかしくないが、打者を射すくめるような視線がいい。
バックの野手たち、そして誰より、ダグアウトで心配しているはずの門馬敬治監督を安心させるマウンドさばき。ストライク先行の投球で、あっという間に3人で打ちとって帰る。
速球の生命力が違う。
三塁側のダグアウト横から見ていると、速球の“生命力”が手に取るようにわかる。
捕手が打者のヒザの高さに構えるミットに、勢いがまったく落ちることなく、速球が突き刺さる。ボールの回転がほどけていない証拠だ。
気持ち良さそうに腕を振れているのは、フォームのバランスがとれているからだ。無理をせずに、ボールを低めに引っ張ってこられている。
スライダー、フォークの沈みもいい。打者のスイングが始まったあたりから、低めのボールゾーンにスゥーっと音もなく……。
斎藤礼二投手が死球を受けて骨折し手術を受けたのは、右手の甲だったと聞く。私自身にも経験があるが、握力の回復に時間のかかる箇所だから心配したが、どうやら杞憂に終わったようだ。不幸中の幸いだったと思う。
練習試合で2度完投しているとも聞く。十分にやれるレベルに回復していると見た。