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ボルダリングとはちがう難しさを実感。
リードの奥深さと日本人選手の可能性。 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

PROFILE

photograph byShigeki Yamamoto

posted2018/03/19 11:00

ボルダリングとはちがう難しさを実感。リードの奥深さと日本人選手の可能性。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

リードW杯での優勝経験がある是永敬一郎が今大会を制した。

男女とも躍進するユース年代。

 リード日本選手権の女子は、今春から中学3年になる14歳の森秋彩(もり・あい)が初優勝したのをはじめ、3位には高校1年になる伊藤ふたば、5位には森と同学年の谷井菜月、8位には春から中学1年生の小池はなと、決勝進出の半数をユース年代が占めた。

 男子も優勝はリードW杯の優勝経験がある是永敬一郎、2位は昨年のリードW杯で準優勝2度の楢﨑智亜という国際大会で実績十分な選手が入ったが、3位には4月から高校3年になる土肥圭太、4位は大学1年になる本間大晴、6位は18歳の中上太斗が顔を並べた。昨年は8選手中19歳がふたりで、ほかは20歳以上という結果だったが、今年はユース年代3選手が初の決勝進出で躍進した。

 森がW杯などのシニア年代の国際大会への出場ができるのは2019年からになるが、卓越した足技で持久力の消耗を最小限に留めた技術の高さは、いますぐW杯を戦えるほどのレベルにある。今回決勝ルートでただひとり完登を記録し、昨年4月からの国内外でのリード大会の連勝を7に伸ばせた要因を、森は次のように明かす。

「リードは1回落ちたら終わりなので、不用意に次のホールドに飛びついたりしないように気をつけています。手の負担を減らすようにヒールフックやトウフック(足のかかとやつま先で保持する技)を使ったり、持久力を保たせるために次のホールドを取る時には足を残すことを意識したりして、一手一手を確実にリスクの小さい登りをするようにしました。リード日本選手権は去年3位に終わった悔しさをモチベーションにして、シーズン中はリードのトレーニングをメインにやって、シーズンが終わってからボルダームーブの練習をしてきた成果も出せて嬉しいです」

【次ページ】 力を入れる箇所と抜く箇所を見極める。

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